先祖返りの町作り
第44話 魔物の氾濫
エルクとルースの結婚式から、
2年ほどたった頃。
二人は結婚直後に新居を購入し、
幸せな新婚生活を送っていたが、
それまで子供に恵まれなかった事だけが、
心配だったようだ。
二人の家を訪ねた私の前には、
幸せの絶頂のような表情をした、二人がいる。
最近になって、ようやくルースが懐妊したのだ。
まだそれほど目立たないルースのお腹を、
エルクが優しく撫でながら語る。
「男の子かな? 女の子かな?
やっぱ、ルースの子供だから、
魔法が得意なのかな?
男の子が生まれたら、俺、剣を教えるんだ」
「もー。気が早いわよ。エルク。
それに、何度も同じ事、言わないで。
まだ生まれてもいないんだから」
待望の第一子の懐妊に、
私も幸せな気持ちになる。
そんな親友達との会話を楽しんで、
数日がたった頃。
私と傭兵団長の元に、
ある不吉な知らせが届けられる。
「魔物の氾濫の予兆だと?」
傭兵団長が眉を寄せる。
最近、近くの魔物の領域の森で、
不穏な空気があるというのだ。
魔物の様子がおかしく、
ごく浅い地域には、いないような魔物が、
都市の周辺地域で、確認されているらしい。
「団長、判断するにしても、
情報が不足しています。
至急、調査団を派遣しましょう。
私も出て、直接指揮を執ります。
それから、この事を騎士団の詰め所と、
残りの傭兵団にも連絡を」
それから、あわただしく決められたのは、
各傭兵団で、精鋭からなる調査団を派遣する事と、
魔物の氾濫に備えて、
医療物資等の備蓄を始める事、
森への立ち入りを禁止とする事等である。
私は、翌日には編成された調査団を指揮して、
魔物の領域の奥深くまで、潜る事となった。
私達の調査団は、担当地域の南東方向に向けて、
移動を開始した。
それから5日後。
予定を切り上げて調査から帰った私は、
最悪の結果を、団長に報告する。
「ほぼ間違いなく、魔物の氾濫が起こります。
到着予想時刻は2日後。南南東の方角です。
記録にあるものと比較した結果、
かなり大規模な、魔物の氾濫が予想されます。
至急、領主様に連絡をお願いします」
それらの事は、迅速に処理された。