先祖返りの町作り
第41話 私の自宅にて
それからしばらく経過し、
昨日ガルムの都市に到着して、仕事を終えた。
そして今、約束通りに、
エルクとルースを自宅に招いている。
家を見物して回った二人は、感想を述べる。
「ヒデオって、本当に金持ちだったんだな。
思ってたよりは小さい家だけど、
全部の部屋に魔道具って、
いったい、どこのお貴族様だよ……」
「自分ちにお風呂があるなんて、ズルイ。
今度着替えを持ってくるから、入らせて」
私は、ルースを止める。
「独身男性の家に、
未婚女性がお風呂に入りに来たら、
いろいろマズいでしょう。
変な噂が広がったら、どうするのですか?」
「私、気にしないから、入らせて」
「何と言われても、ダメです」
他愛もない会話を楽しみながら、
楽しい時間を過ごし、
手料理をふるまった後、
お茶を飲みながらくつろいでいた。
「ヒデオ。
そろそろ魔法制御の訓練方法、教えて」
「じゃあ、俺はもうちょっとこの家、
探索してくる」
エルクが部屋を出て探索に出た後、
椅子とテーブルを脇に寄せ、
床にルースと向かい合って座る。
これから教える魔法制御の訓練は、
椅子に座って行っても問題ないが、
元日本人なせいか、
床に胡坐をかいて座った方が、
より集中できるような気がして、
私はいつもこうやっている。
「それほど難しいものではありません。
まずはこうやって、
球の形の水球を作ります。
そして、形を維持したまま、動かします」
私の顔の前に、
野球ボールくらいの正確な球ができる。
それが、私を中心として、くるくる回る。
「この時のコツは、できるだけ小さくて、
正確な球の形を維持する事です。
この時の魔法は、何でも良いのですが、
屋内でやる時は、水が一番扱いやすいですね。
火球とかだと、火事になったらいけませんので」
ルースは、真剣な表情で水球の魔法を発動し、
ぬぬぬっ、と、かわいらしい掛け声を出しながら、
徐々に正確な球形にしていく。
ボーリングの玉よりは大きいが、初めてやって、
この大きさと正確さは素晴らしい。
「すごいですね。さすがはルースです」
眉間にしわを寄せながら、
真剣な表情で、魔法を維持するルースが応える。
「ヒデオに言われても、ほめられてる気がしない。
ヒデオだったら、どのくらいできるのか、
見せてくれない?」
「こんな所でしょうか」
正確な球や円柱、立方体や三角錐等の水が、
部屋の中をランダムに飛び回る。
その様子を見たルースは、あきれ顔だ。
「これって、私には絶対無理じゃない?」
「ルースほど才能のある若者なら、
いつかできると思いますよ」
「ヒデオだって若いじゃん。
時々、おじいちゃんみたいな事、言うよね」
(おじいちゃんですか。
52歳ですから、あながち、
間違ってはいませんよ?)
苦笑しながらごまかす。
想像していたような、殺伐とした雰囲気もなく、
私の傭兵としての生活は、順調に過ぎていった。