先祖返りの町作り
第23話 魔道具師見習い
私の魔道具師見習いとしての生活は、
順調に進んだ。
最初の頃こそ、
私の種族名がばれたらどうしようと、
思っていたが、
先祖返りは、魔石の噂や伝説から、
存在を知ってはいても、
誰も本物を見た事がなかったため、
気付かれなかった。
なんだか耳の長い、変わったアルク族として、
認識されている。
下積みとしての修行は、
金属細工を覚えるものだった。
これは、魔道具を作るには、
細かい加工技術が必須のため、
見習いなら誰でも通る道だ。
蝶番のような、簡単なものから始まって、
今では、ある程度の細工物が作れる。
6日に1度の休日には、近場の森の浅い所で、
狩りをして腕を維持し、
魔石を石屋に収め、肉を肉屋に、
毛皮を服飾屋に収めて小遣いにしている。
やろうと思えば、
里の一般的な魔石も作れるが、
それをやってしまうと、下手したら、
親方よりも高収入な弟子になるため、
自重している。
ちなみに都市の住人が、狩り等のために、
都市に出入りするのは無税だ。
都市を出る時に、門番に申請すれば、
割符を発行してもらえ、
入る時にこれを見せれば、入街税が免除される。
この都市の税制は、入街税と固定資産税、
後は商店や工房等の規模による課税だそうだ。
戸籍制度のようなものはないらしく、
人頭税等はかからない。
この国の貴族制度も聞いた。
貴族の階級は3段階しかなく、それぞれ、
上級貴族、中級貴族、下級貴族と呼ばれるらしい。
日本の侯爵とか伯爵のようには、
細分化されていないようだ。
だいたい、下級貴族が村の領主、
中級貴族が町の領主、
上級貴族で都市の領主と思っておけば、
良いそうだ。
下級貴族であっても、
平民からすれば雲の上の存在で、
下手にかかわりあったら、
不敬罪で簡単に首が飛ぶ。
ただ、お貴族様は、
貴族街からほとんど出てこないため、
普通に暮らしていけば、問題ないそうだ。
当初の予定よりも、
かなり里に近い所に腰を落ち着けたため、
年に一度ほど長期休暇をもらい、里帰りしている。
初めて里帰りした時には、
涙を流して大歓迎されたのは、良い思い出だ。
里は記憶と変わらない姿で、とても心が温まる。
(いつか世情に飽きて、隠居する時は、
必ず里に帰って、骨を埋めましょう)
そう心に固く誓う。