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先祖返りの町作り

第20話 初めての都市

頭の中で、これまでに判明した、
この世界の常識を復習していたら、
門にたどり着いた。

イメージしていたものと異なり、門は小さいし、
誰も並んでいない。

アレンさんに確認した所、

「こちらの方角は自由国境地帯で、
 森に狩りに行くものぐらいしか、
 出入りしないからな」

との事。

都市に入る手続きが始まった。
門番さんとアレンさん達は、顔見知りらしく、
慣れた手つきで手続きが進んでいる。

「そこのアルク族は、
 森の隠れ里の魔石を持っています」

アレンさんが、私の持ち物を自己申告する。
入街税は積み荷の一割で、
旅の必需品等は無税だが、
私の魔石のような高額商品は、
当然税金がかかる。

渡した袋の中身を見た門番さんは、
なぜか目を見開き、
しばらく固まった後で、数を数えだした。

(数えるごとに、
 なぜか頬が引きつっていくのですけど、
 何かマズいものでも、
 持ち込んだのでしょうか?)

私は税金として、11個の魔石を収めた。
端数は切り捨てのようだ。

穀物等も、袋やたる単位で確認され、
必要個数を収める。

手続きの簡略化のため、
重量単位で計算して、
きっちり取り立てる事は、しないようだ。

リスティン王国へ、
やっと足を踏み入れた私は、
むせかえるような悪臭に、顔をしかめる。

「話には聞いていましたが、これほどとは……」

この都市の平民は、信じられない事に、
汚物は道に、ほぼ垂れ流しらしい。

都市中心部の、
内壁に囲まれた貴族街であれば、
下水道が整備されて清潔らしいが、
下町はどこもこんなものだそうだ。

下水道を建設するためには、
微妙な角度を測定する必要があり、
測量するための高等数学も、
存在すると思われるが、
先端技術は貴族が管理し、
使い古されたものだけが、
下町に下賜されるらしい。

先端技術を持つ技術者は、
名誉貴族として、
貴族に準じた扱いを受けるため、
爵位を継承できない、
次男以下の貴族子弟達は、
必死に勉強して、
技術を習得して名誉貴族になるか、
騎士団に入るらしい。

私をなじみの宿屋まで案内してくれた、
アレンさんは、
私の宿泊料を前払いで払ってくれた。
商品の仕入れ等のため、
アレンさんも、しばらく滞在するようだ。

「今の積み荷を売り払ったら、
 しばらくは自宅でゆっくりするから、
 後で魔石の換金場所も、教えてやるよ」

との事。

あまりの悪臭から、気分が悪くなり、
ベッドに青い顔をして、あおむけに転がると、
案内された部屋までついて来た、
アレンさんが言う。

「こればかりは、慣れる以外に方法がないな」

苦笑いしながら、
小遣いとして、1枚の小銀貨を渡して来た。

「これを持って、気分転換に観光でもして来いよ」

「何から何まで、お世話になります」

「坊主には、儲けさせてもらったからな。
 これくらいは、サービスさせてくれ」

アレンさんが神々し過ぎて、拝みそうになる。