Novels

SOLID STATE ANGEL

第60話 ハーレム小隊

 それから季節が過ぎ、夏になったころ。俺達の大隊も連携訓練を終え、戦場働きをするようになっていた。

 もともと選び抜かれた精鋭でそろえた部隊だったうえに、俺の主導でお互いをサポートしあうように重点的に訓練した結果、俺達の部隊はかなり効率的にブリキ野郎をスクラップに変えられるようになっていた。

 そのため周囲からは、さすがは人類最強の部隊だと言われるようになった。

 ただ、俺が直接前線働きをすることが少なくなり、指揮に専念するようになっていた。その結果として、俺の直属小隊も予備兵力として後方で待機していることが増えた。

 この状況に、セシィは不満だったようだ。

「だいたい、あたいはジェフと一緒に敵を殴り飛ばしたいから軍に入ったんだぜ? こんな後方で味方を見守るためじゃねぇよ」

 どちらかというと、俺も前線で剣をふるっていた方が性に合うため、セシィの不満もよく分かる。

 そこで、セシィをなだめるためだと言い訳をして、たまに指揮権をウォルターに預け、セシィとセシルを連れて俺も出撃するようになった。

「しょうがねぇなぁ。セシィが本気で怒りだしたら、お前も含めて誰にも止められないからな。でも、今度一杯おごれよ?」

 これは、指揮権を預けられたウォルターの言葉だ。俺はそれに了承の意を示す。

「ああ。もちろんだ。今度とっておきのボトルキープしているやつを飲ませてやるさ」

 そうすると、セシィもそれに乗っかろうとする。

「あ、ズリィ。あたいにも飲ませてくれよ」

「じゃあ、出撃を一回減らしてくれたらな」

 俺のその返しに、かなり真剣に悩みだすセシィ。しかし、最後はイイ酒が我慢できなかったらしく、次の出撃はなしになった。

 そんなやりとりがありながらも、俺の直属小隊は定期的に前線働きをしていた。その時は指揮官先頭を体現し、俺が最前列で突撃して近接戦闘を開始していた。

 やがてこれが死神殺しの部隊の名物となり、俺の名声が若干上がる結果になっていた。

 しかしウォルターに言わせると、俺は両手に花状態で戦場に向かっていることになるらしく、『切り込みハーレム小隊』と揶揄やゆされていた。

 これが俺の部隊でウケたようで、やがて仲間内からも『ハーレム小隊』と呼ばれるようになっていた。

 そんなある日。今日も俺の直属小隊で切り込んで戦いを始め、それが終わって帰還したタイミングで、ウォルターが声をかけてきた。

「今日もハーレム小隊のお歴々は仲がいいねぇ」

 そんなウォルターに、俺は若干の反撃を試みる。

「俺達をそんなふざけた名前で呼んでいていいのか?」

「どういうことだ?」

 ウォルターは分かっていないようなので、俺の直属小隊について解説する。

「言っておくが、お前もそのハーレム小隊の一員なんだぞ?」

 俺のその指摘に対し、ウォルターは予想の斜め上の反撃をしてきた。

「え? ってことは、お前、バイセクシャルだったの?」

「そんなわけがないだろう!!」

 俺は思わず脱力しそうになり、強く反論していた。そんな俺に対し、ウォルターは肩をすくめながら続きを語る。

「おー、怖い怖い。冗談だよ。ジョーダン」

 こいつ、だんだんと人をからかうスキルだけ、妙にレベルアップしまくってないか?

 そんなことを考えながら、俺達の日常は過ぎていった。