SOLID STATE ANGEL
第32話 神に弓引く勇者達
それから天使を撃破するための作戦案を、俺はなんとか自分で定めた期限内にまとめることができた。
その後、小細工に必要になる道具の説明も含め、前線司令部のお偉いさんたちの前で説明を行った。この作戦案は採用され、すぐに技術部に小細工用の道具の作成命令も下った。
その結果、あっという間に準備が整ったようだ。その直後、俺は再びアーロン連隊長に呼び出しを受けた。
「貴官の中隊に天使の撃破を任せる。頼んだぞ」
「はっ。微力を尽くします」
俺はこの後に中隊の仲間を集め、作戦の説明を行った。
「すまんな。一番危険な役目をみんなに押し付けることになってしまって」
俺がそう謝罪すると、みんなを代表してエルトンが気にするなと言ってくれる。
「何を言っているんですか、中隊長。俺達、死神殺しの部隊以外に、天使殺しなんて大役が務まると思いますか?」
ブライアンも同意してくれる。
「そうですよ。こんな格好のいい役割は、他の誰にも渡しませんよ。その方が、後々女性たちに自慢できますからね」
ブライアンらしいセリフに、中隊の仲間達から笑いが巻き起こる。
こうして、俺達は極秘任務を受けた部隊となり、前線司令部の近くで天使の出現を待つこととなった。
中隊の全員が対天使用の小道具を装備した状態で数日を待つと、それはついに姿を見せた。
なにか小さな人影のようなものが高速で飛来し、俺達の陣地のど真ん中へと降り立つ。そしてそれはそのまま、当たるを幸いに周囲の多脚戦車を薙ぎ払い始めた。その様子を見た誰かが、外部スピーカーで叫んだ。
「天使だ! ついに天使がこっちに来たぞ!!」
その知らせに味方はパニックになりかけた。
そうすると、その声に負けないほどの大音量で、作戦司令部からの指示が飛ぶ。
「安心しろ!! 天使の対策部隊はすでに用意している! 各自落ち着いて、各機にインストールされている指示書138番を参照するように!! 現在交戦中のものには、周囲のものが近距離レーザー通信を使って口頭で伝えるように!」
天使に対抗する手段がある。そう知らされた味方は少し落ち着きを取り戻した。
この作戦は極秘であるため、通信などでは知らされていない。いつどこで神を自称するヤツが通信をハッキングするかわからなかったからだ。そのため、各機にあらかじめ作戦指示書という形でインストールされていたのだ。それを見るようにとの指示が下った。
その間も天使は無双状態だったが、なんとか統制を取り戻した味方は合図を待つ。その間に俺達の中隊は指定されたポイントへと移動を完了していた。
その後、前線司令部から信号弾が上がる。
内容は、作戦開始。
さあ、天使殺しの時間の始まりだ。