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SOLID STATE ANGEL

第31話 天使の戦闘記録

 それからしばらくして、俺のもとに天使の戦闘データがインストールされた情報端末が届けられた。俺はそれを寝床の近くにある簡易机の上に広げ、早速分析を開始した。

「これは、想像していた以上にすさまじいな……」

 俺は思わずうなり声をあげていた。天使の戦闘能力は、あの戦場の死神がかわいく見えるレベルで隔絶していた。

 戦場の死神の戦い方は、言ってしまえばワンパターンだった。一機撃破すると必ず安全圏まで一度距離をとっていた。

 しかし、天使はより洗練された動きで、次の獲物の位置へと移動している。

 右手に持った剣は、身の丈ほどもある巨大なものだ。どうやら、放送時に持っていた剣は儀仗的ぎじょうてきなものだったようだ。

 それを片手で軽々と振り回し、サイズや重量的にかなり差があるはずの多脚戦車と打ち合っても、負けないどころか打ち勝っている。

 しかも恐ろしく素早いため、天使と剣を合わせられたものは片手で数えられるほどしかいない。左手には盾を持っているが、それを使った場面は記録に残っていないほどだ。

 さらに恐るべきことに、この天使は大空をも支配していた。

 背中に畳んで収納されている羽を広げ、足の裏からジェットを噴き出して空を飛ぶ。ただ、その羽は美しい鳥の羽などではなく、無骨な金属製のデルタ翼だったが。

 盾の裏に装備しているらしきレーザー砲を使い、こちらの戦闘機を軽々とロックオンして次々に叩き落していた。

 その飛行の軌跡は人間業ではないと言い切れるほど鋭いもので、こちらの味方は誰もロックオンできない。

「これは、少なくとも空では対抗できないな……」

 その恐ろしいほどの運動性能を見て、俺は空で対抗する方法を考えることをあきらめざるを得なかった。

「と、なれば、まだ平面的な動きになるうえに、レーザーが使用不能になる地上戦で仕留めるしかないわけだが……」

 それもかなり難しいと言わざるを得ない。

 戦場の死神の時のような、落とし穴を使う方法は使えない。空を飛べる相手には意味がないからだ。

「いや。待てよ。落とし穴は使えないが、砲撃で逃げ道を誘導すること自体は有効そうだな」

 天使の唯一と思われる欠点は、人型であるがゆえに重量が軽いことだと思われる。

「天使の体重がどのくらいかはわからないが、それでもあのサイズである以上、そこまで重たくはないはずだ。で、あれば……」

 多脚戦車の主砲の質量弾を当てることさえできれば、その質量の差から大ダメージを与えられるだろう。

 しかし、あの素早い天使にとても当てられるとは思えない。

 それでも戦場の死神の時のように、砲撃を使えば、逃げ道をある程度こちらでコントロールすることはできそうだ。

 これが勝ち筋につながらないだろうか。

 そう考えた俺は、そこから必死に頭を回転させ続け、天使を打倒しうる作戦を考え続けた。