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先祖返りの町作り(再調整版)

第209話 出陣前の演説

 それからの私は、準備に奔走していた。

 集まってきた傭兵達をまとめ、軍として再編成した。そして、付け焼刃ではあるが、連携訓練も行っていた。

「各個人でバラバラに戦ってしまうと、連携した貴族軍相手では、各個に撃破されてしまいます。

 よって、規律を重視し、指揮命令系統を整え、軍団としてまとまって、戦力の集中運用をする事こそが、大規模な戦争で勝てる方法なのです」

 私はこのように、口を酸っぱくして繰り返していた。

 実例として、ガイン自由都市軍の見事な連携を見せる事で、納得してくれた傭兵も多かったようだ。

 こうして半年後には、反乱軍が何とか形になっていた。

 そして今日。いよいよ出陣の日が来た。

 ユキムラから総大将に任命された私は、集結した反乱軍の全軍を前に、演説を始める。

 ずっと一人で考えていた内容を、マイクとスピーカーを無視するような大声で、熱く語りかける。

 まず初めに、平民に新しい名前を与える。

「皆さん! 私達はもはや、平民ではありません! 私達は『市民』です!!

 平民等という名前は、傲慢な貴族達が私達を見下すための言葉です! そんなくだらない名前は、さっさと投げ捨ててしまいましょう!

 私達は貴族達に、声も高らかに宣言しましょう!

 我々はもはや! 平民ではないと! 『市民』であると!!」

 市民の軍隊である反乱軍にも、新しい名前を与える。

「貴族達が、我々『市民』のための軍隊を見下すための、反乱軍の名前も返上しましょう!

 私達は! 解放軍であると!!

 後、もう一歩です!

 愚かな貴族達の圧政に苦しむ、我らの同胞である『市民』達を!

 我ら! 解放軍の手で! 解放しましょう!!」

 そして、最終目標を伝える。

「私は皆さんに約束します! 思いあがったリスティン王国を! 打倒した! その暁には!!

 私は! 『市民』の! 『市民』による! 『市民』のための国家を! 必ず樹立して見せます!!」

 リンカーンの有名な演説の丸パクリである。人民を市民に、政治を国家に、それぞれ置き換えただけである。

 演説の最後に、解放軍による戦争にも、新しい名前を与える。

「さぁ! 出陣です!

 我ら解放軍の! 最初で最後の! 聖戦を始めましょう!!」

 演説が進むにつれて静まり返る会場。

 しばらくはシーンとしていたが、少しずつ歓声が大きくなり、やがては大地が悲鳴を上げるほどの地響きとなる。

 この演説は、歴史に残る名演説として高く評価され、やがて書籍として出版される事になる。

(細工は流流仕上げを御覧じろ。ですね)


 さあ、聖戦の始まりだ。