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先祖返りの町作り(再調整版)

第206話 だいなまいと

 会議を終えた私は、その足でダイガクの自分の研究室へと向かい、新たな攻撃手段についての考えを、一人、まとめていた。

「『戦車』のような極端な兵器ではなく、もっと開発が容易なもので、何かありませんかね?」

 しばらく考え、結論に至る。

「やはり、『火薬』の改良でしょうね」

 現在のゾウキンバクダンには、ニトロセルロースが使われている。これ以上を目指すとなると、TNT火薬やニトログリセリンの開発が必要になるだろう。

「幸い、化粧品の保湿液に『グリセリン』と思われるものがありますから、ここは『ニトログリセリン』の開発を目指しましょう」

 ニトログリセリンの材料は、お分かりの通りグリセリンだ。これには保湿効果があるため、地球でも化粧品に使われている。

 ダイガクで様々な物質の研究が進んでおり、その中には、グリセリンと思われるものがいくつかある。

 それを使えば、ニトログリセリンが作れるはずだ。

「ただ、『ニトログリセリン』は非常に不安定な物質で、すぐに暴発してしまうのが問題なんですよね……」

 ニトログリセリンは、ちょっとした衝撃でも暴発してしまう。実際、昔はこれが鉱山の採掘現場等で使われていたが、暴発事故が絶えず、問題になっていた時代がある。

「ここは、偉大なノーベルの発明品を使わせてもらいますか。鉱夫の安全のために開発された『ダイナマイト』を、この世界でも戦争に利用させてもらいましょう」

 ノーベル賞で有名なノーベルは、暴発事故で傷つく鉱夫達を憂い、安全にニトログリセリンを使えるようにと、ダイナマイトを開発した。

 しかし皮肉なもので、その手軽さ故に戦争で多用されてしまい、彼は人殺しの道具で莫大な資産を得てしまう。

 それに心を痛めたノーベルが、人類の発展に寄与した人に遺産を分け与えて欲しいとして作られたのが、ノーベル賞なのは有名な話だ。

 心優しいノーベルには大変申し訳ないが、この世界でもダイナマイトを戦争に利用させてもらう。

 作り方は意外と単純で、砂と粘土にニトログリセリンをしみこませる事で、衝撃に強くするのである。

「ただ、研究開発は危険ですから、防御魔法を瞬時に展開できる、私がやるべきでしょうね」

 仕組みの上では簡単だとはいっても、開発するには、その分量等を試行錯誤する必要があり、かなりの危険を伴うと予想される。

 そこで、いべんとはんどらの魔法で瞬時に光盾の魔法が展開できる私が、直接開発するのが妥当だろう。

「そうと決まれば、早速研究開始です!」

 私は気合を入れて、来るべき日に向けての開発を開始したのであった。