先祖返りの町作り(再調整版)
第191話 2進数と論理回路
すぐにでも電卓の開発を行いたかったが、そのためには、デジタル回路の基本となる、2進数や論理回路と呼ばれるものの知識が必須になる。
そこで、それらの専門書の執筆から始める事にした。
2進数の考え方については有名であるため、知っている方も多いだろう。
0~9の数字の組み合わせで数を表現する、通常の数え方が10進数である。それに対し、0と1だけを用いて数を表現するのが2進数だ。
そして論理回路とは、2進数の計算を行う電子回路の事である。電卓に必要な加算器や減算器も、一種の論理回路だ。
これは、AND, OR, NOTと呼ばれる3つの基本回路からなる。
小難しい専門用語を並べてみると、ANDは論理積、ORは論理和、NOTは否定と呼ばれる。
これらは、NANDと呼ばれる一種類の回路だけでも代用が可能であったり、同じ結果でも回路を単純化させる事ができたりと、いろいろと奥の深い学問でもある。
残念ながら、そこまで深くは記憶していないため、ごく基本的な内容だけを専門書にまとめる事にした。
以後は基礎研究課題として、ダイガクに丸投げする予定である。
1年ほどかけて専門書を書き上げた私は、今までに高等学校やダイガクを設立した経験をなぞり、先生役となる研究者の教育から始めた。
さらに1年ほどかけて研究者が育った時点で、彼らと相談して教科書の編集作業を始めた。
こうして、一歩ずつではあるが着実に準備を進め、さらに2年が経過する頃には、ダイガクに新たな学科を立ち上げる事ができた。
電気電子工学科と名付けられたこの学科は、最初こそ人気のないマイナーな学科であった。しかし、後にデンキ式デンタクが発表されると、徐々に生徒達も増えていくのである。
「いつかは『プログラミング』可能な計算機も作って、本職の『ソフトウェア』の学科も作りたいですね」
いつかは情報工学科も設立してみたいという、願望もあるにはある。
集積回路ができれば最高であるが、あれにはかなり高度な技術の積み重ねが必須だ。
「おそらく、『集積回路』が実現するほどの時間をかける前に、力を付けた平民達による革命が起きるとは思うのですが……」
私は一人、領主館の自室でかなり物騒な事をつぶやいていた。