先祖返りの町作り(再調整版)
第184話 ガイン自由都市の宝石
それから更に、3年の後。
蒸気機関の研究は順調に進み、今では、ある程度の大きさの鉄道模型を使った実験が行われていた。
(当初覚悟していたよりも、かなり短い期間で開発が完了しそうですね)
私は日々進む研究に、確かな手ごたえを感じていた。
また、島の里で産出している魔石も順調に流通しており、魔石の価格も若干の落ち着きを見せ始めていた。
そしてこの頃、セリアは20歳になっていた。
彼女が赤ん坊の時に予想した通り、とても美しく成長した。両親に似て知的な女性になっており、どこかかつてのネリアを彷彿とさせる、丁寧な物腰の淑女でもあった。
そのため周囲からは、次第に「ガイン自由都市の宝石」と呼ばれるようになっていった。
そんなセリアを振り向かせるために、男性陣が熾烈な争いを繰り広げていたのも、予想通りであった。
まだ幼い時分からモテモテであったため、父親のイサミが渋い顔をしながら、
「まだまだあなた達は、一人前とは認められませんので、絶対にセリアは誰にも嫁にやりません」
と、口を酸っぱくして繰り返していたのは、今となっては良い思い出だ。
そんなセリアも、昨年には恋人を家族に紹介していた。イサミもさすがに、もう一人前ではないとは言えなくなっていたようで、しぶしぶながら紹介を受け入れていた。
そのお相手はカルロさんという名前で、若手の官僚として働いている。
彼は周囲から、
「真面目以外に取り柄のない、面白みのない人」
と、陰口をたたかれるほど、真面目で誠実な青年であった。
(カルロさんは、どこかレオンさんに似た雰囲気ですし、やはりセリアはネリアに似ているのでしょうか?)
私はそんな感想を抱いていた。
そして今日。セリアとカルロさんの結婚式の日だ。
既に周囲には、血の涙を流しそうな男性達が、多数やけ酒をあおっている。そんな男性陣の怨嗟の視線を受けながらも、式はつつがなく終わり、今は披露宴が開かれている。
セリアとカルロさんは、まず両親であるイサミとリリアさんに挨拶を済ませた。
その次に私の所へ来たセリアは、ずっと疑問に思っていたらしい内容の質問を始めた。
「私がカルロ様を紹介した時、大おじい様は、一人だけ納得の表情をしておられました。その理由をお聞かせ願えないでしょうか?」
その問いに、私は正直に答える。
「四代目領主のシゲルの姉に、ネリアという女性がいたのですが、彼女とあなたはそっくりなのですよ。
ネリアも、とても真面目で誠実な男性を旦那様に選びましたので、ああ、なるほどなと思ったのです」
このようにして、披露宴も無事に進行していった。
ただ、周囲に酔いつぶれた男性達が、死屍累々といった様子で、あちこちに積み上がっていったのはご愛敬だろう。