先祖返りの町作り(再調整版)
第179話 産業革命を目指して
私の生誕200周年祭の喧騒がすっかり収まった頃。
私は自分にできる事で、何かお返しがしたいなと考えるようになっていた。
ダイガクの自分の研究室で、いつものように独り言をつぶやきながら、考えをまとめていく。
「やはり、私は研究で皆の生活を向上させるのが、一番の恩返しでしょうね」
そう、結論付けた。
そこで、さらにその考えを進め、どのような研究内容にすれば一番生活が潤うかを、自分に問いかける。
「魔力もーたーによって、生活の質は向上しました。しかし、これの最大の難点は、魔道具形式であるために高コストな事なんですよね……」
様々な産業に応用され始めているとはいえ、魔力もーたーの高コストが問題になり始めており、普及の速度が思ったほどには早まっていない。
もう少し、一般的に広められるものはないかと、考えを進めていく。
「一番良いのは、『ディーゼルエンジン』等を開発してしまう事なのですが……」
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンは内燃機関と呼ばれるものの一種で、効率が優れる利点がある。
しかし、その最大の難点は工作難易度だ。
どうしても細かい部品が多くなるため、ある程度以上の工作技術の積み重ねがなければ、実現不可能である。
「と、なると、まだ工作難易度の低い『蒸気機関』ですかね?」
蒸気機関は外燃機関と呼ばれるものの一種である。内燃機関に比べて効率の面では落ちるが、部品の細かさは緩和されるため、工作難易度は下がる。
魔力ジドウシャの開発により、基礎的な工作技術自体は向上しているため、今なら作れるかもしれない。
「よし。ここは産業の父の二つ名に恥じぬように、本物の産業革命を目指して、『蒸気機関』を開発してみましょう」
蒸気機関の開発において重要な要素となるのは、実は既に開発している火力発電所である。
あれも一種の外燃機関と呼べるものだ。
発電所では、蒸気を沸かしてタービンを回している。これをもう少し改良してピストンを上下させるようにすれば、様々な産業に応用可能な、安価な動力源が得られるはずだ。
「『蒸気機関』が実現できれば『機関車』も作れますから、大規模な『列車』輸送も可能になりますね」
魔力ジドウシャの登場により、魔力もーたーの有用性が広く認知されるようになった。それと同様に、蒸気機関で汽車を開発すれば、その有用性に皆気付くはずだ。
「まあ、長い道のりになるかもしれませんが、『列車』が開発できれば国内の移動も簡単になります。
そうなれば、ガイン自由都市は『ターミナル駅』として、大規模な発展が期待できるでしょう」
私はこの地が大きく発展した様子を思い浮かべ、気合を入れて研究を開始する事を決定したのであった。