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先祖返りの町作り(再調整版)

第165話 シズカのお婿さん

 イサミの結婚式からしばらくが経過した頃。

 シズカも結婚式を挙げていた。

 その結婚式で、父親であるリョウマは号泣していたが、これは娘を取られる悔し涙ではなく、無事にまともな結婚ができて良かったという、うれし涙であったのは、ご愛敬だろう。

 シズカはイサミと正反対な性格で、剣術や馬術を好む、とても勇ましい女性に成長していた。

 つまり、イサミは勇ましくなく成長し、シズカは静かではなく成長していた。

(なんだか、シズカの方が巴御前っぽくなりましたね)

 私はそんな感想を抱いていた。

 ちなみに巴御前は木曽義仲の愛妾で、前線に出て戦う勇ましい女性だ。

 そんなシズカは、実は一部の男性陣から非常に人気があった。崇拝されていたと言っても過言ではない。

 しかし、彼らの性癖が非常に問題であった。

 彼らはシズカに罵られると恍惚な表情を浮かべ、それにキレたシズカが足蹴にすると、嬌声を上げながら歓喜する始末である。

 現代の割と進んだ寛容さを持っている私でも、これにはドン引きしたぐらいなので、シズカはほとほと困り果てていた。

「大おじい様。あの気持ち悪い連中を、少しでも遠ざける方法はないものでしょうか?」

 ある日、私はシズカから相談を受けていた。

 私もどうにかしたいと思っていたため、げんなりとしているシズカを視界の端にとらえながら、しばらく腕組みをして顎に手を当て、必死に頭を回転させた。

「そうですね……。あの連中は、あなたに痛めつけられるとかえって喜びますので、別の人に排除してもらうのはどうでしょう?」

 シズカは、まさか具体案が出てくるとは思っていなかった模様で、がばっとこちらに顔を向けて、食い付き気味に先を促す。

「と、いいますと?」

「あなたのお眼鏡にかなうほど強い男性を、正式な彼氏として常に行動を共にするのです。そしてその彼氏に、あの気色悪い連中を物理的に排除してもらいましょう」

「それです! さすがは大おじい様! 大好きです!!」

 シズカはそう叫ぶと、私の胸に飛び込んで甘えてくる。

 私の胸で幸せそうに頬をこすりつけているので、よほどうれしかったのだろう。

(しかし、この場面をクリスさんに見られると、叱られてしまいそうですね)

 もうすっかり大きくなったシズカを見ながら、私はそんな感想を抱いていた。

 そんな余計な事を考えていると、シズカは私の背中に手を回して、ギュッと抱きしめた。

「ぅごふぅ……」

 抱きしめる力が強過ぎて、変な声が出てしまうほどかなり痛い思いをしたが、そこは指摘しないでおいた。

 この提案を聞いたシズカは、その足でガイン自由都市軍の宿舎へと直行していた。頻繁に彼らと私的な訓練をしている彼女には、思い当たる男性がいたようだ。

 そして、ガイン自由都市軍の中でも精鋭の男性に、ド直球で告白して付き合ってほしいと懇願したそうだ。

 以前から面識のあった彼は、突然過ぎる告白に驚きながらも、快く了承してくれたとか。その様子はとても男らしかった模様で、シズカの好みにもマッチしていたのだろう。

 その彼氏はザインさんという人で、ゴリゴリのゴリマッチョな屈強な男性である。武術は一通り得意な彼であったが、一番得意なのが無手での格闘術だった。

 そのため、シズカ目当ての変態を見かけ次第、ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返している姿が、度々目撃されるようになっていた。

 彼に投げ飛ばされた変態達は、

「こんなムサい男に投げられたい訳ではない」

 と、その場で崩れ落ちて、さめざめと泣いていたとか。

 自分の彼氏のその雄姿に、シズカも大いに惚れ込んでゆき、そのままゴールインとなったのであった。