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先祖返りの町作り(再調整版)

第152話 浄水施設の研究

 イサミとトシゾウが8歳になった頃。

 上下水道の施設工事がようやく完成していた。着工してから実に24年の歳月を要した一大プロジェクトが、やっとの事で完了した。

「次は、安全な上水道のために浄水施設の研究を開始したいですね」

 そう考えた私は、早速領主のリョウマに相談し、浮いた予算の一部を研究費としてダイガクに融通してもらった。

 浄水場の機能を大まかに分けると、不純物の沈殿とろ過、そして消毒である。

 沈殿とろ過については、規模を大きくすれば現在の技術水準でも可能だろう。

 消毒については、日本の水道には塩素が使われている事が有名である。しかし実際には、塩素そのものではなく、次亜塩素酸ナトリウムという塩素の化合物が使われている。

 この次亜塩素酸ナトリウムは、食塩水の電気分解で作れる。

 幸いにして既に発電所を作っているため、電力の問題はクリアしている。よって、ある程度の大量生産も問題ない。

 この化学物質の作り方は、以下のようになる。

 食塩水の電気分解時、陰極から水素が発生し、陽極から塩素が発生する。

 発生した塩素は水溶液中のナトリウムイオン等と反応し、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液が作れるのである。

 ただ問題なのは、どの程度の濃度であれば、安全で殺菌作用の強いものが作れるのかが不明な点である。

 毎日使用する飲料水にしたいので、ある程度長期に渡っての研究を継続する必要があるだろう。

 また、次亜塩素酸ナトリウムの研究は、いろいろと応用範囲が広い。

 酸化剤としても使えるため、様々な物質の酸化反応に使える。そのため、新しい化学物質を作る事も可能だろう。

 さらに、次亜塩素酸ナトリウムからは比較的容易に塩素が作成できる上に、塩酸も作れるようになるはずだ。

 塩酸ができれば、そこから研究を進めると、やがてはバッテリーも作れるようになる。

 そして、バッテリーの研究を進めれば乾電池も作れるようになり、懐中電灯や壁掛け時計等、応用が広がる。

「なかなかに夢が広がる研究ですが、いつも通り、焦らず一歩ずつ進めていきましょう」

 私は決意も新たに、次第に浄水施設の研究に没頭していくのであった。