先祖返りの町作り(再調整版)
第120話 上納金
えあがんの配備が始まって、少し経過した頃。
実弾射撃訓練の様子を見たシゲルが、目を輝かせながら私に話しかけた。
「さすがは、ひいおじい様ですね。これで我が軍は、宣言通り最強になったのではありませんか?」
私は頷いて肯定する。
「ええ。私もそう思います」
ここで、シゲルはある意外な提案を始めた。
「そうなると、いっその事、国王に収めている上納金を止めませんか?」
上納金というのは、各貴族家が集めた税金の中から一定割合を国庫に納めるものである。ガイン自由都市もその規模に応じて、結構な額の上納金を毎年納めている。
私はそれに、否定的な意見を述べる。
「しかし、それをやってしまうと、王国と全面戦争になりますよ?」
「でも、ひいおじい様は、負けるとは思っていないのですよね?」
私はそれに頷き、その意味する事を語る。
「もちろん、負けはしないでしょう。しかし、その場合、シゲルが新しい国王様になってしまいますよ? あなたが王様になりたいのでしたら、私は全力でサポートしますが」
私がそう念を押すと、シゲルはふるふると首を振って前言を撤回する。
「とんでもない。私はできる事なら、領主の地位も優秀な平民に代わって欲しいぐらいなのに、王様なんてめんどうな立場はごめんこうむりますね」
私はそれに微笑みを返して、同意する。
「私も、国王一族の初代なんて地位はごめんですから、シゲルの気持ちは良く分かります」
そうやって、私達は苦笑し合った。
「では、上納金はこれまで通り、国王に納めますね」
シゲルはそうやって現状維持を決定すると、私にある質問をする。
「でも、ひいおじい様は、この状況がずっと続くとは考えていないのでしょう?」
「ええ。もちろん」
「それは、どのくらいで変わりますか?」
「早くて、後200年といった所でしょうか」
その年月の長さに、シゲルはとても驚いていた。
「ひいおじい様には、とても遠大な計画があるのですね……。できれば、その計画の一部でも聞かせてもらえませんか?」
私はその質問にしばらく考え、野望の一部を語る事にした。
「私は、この国を平民達が自分自身で治める国にしたいのです」
「そのような事が可能なのですか?」
「ええ。ただ、そのためには、もっと平民の学力を上げる必要があります。シゲルは協力してくれますか?」
私がそう言うと、シゲルは大きく頷いて賛同してくれる。
「もちろんです。そうなれば、私の子孫達も領主という重荷から解放されますからね」
そうやって領主の了解を得た私は、さらに高度な学問を教えるための学校の建設計画を、前倒しで推進するのであった。