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先祖返りの町作り(再調整版)

第114話 街壁と入街税

 それからしばらくが経過し、カズシゲが2歳になった頃。

 大量の移住者の処遇も、かなり目途が立っていた。そのため、領地の財政的にも少し余裕が出てきた。

 そんな情勢の中、領地の運営会議の場で、レオンさんが新たな提案を行った。

「前の戦争では平野部で大勝利を収めましたが、いつもうまくいくと仮定するのは非常に危険です。

 ですので、私はこの都市に、新たに街壁を建設する事を提案します」

 官僚の一人も同意する。

「私も賛成します。まるっきりの無防備というのは、かなり問題があると思いますので」

 他の官僚達も賛成のようで、誰からも反対意見は出なかった。

 ここで、ゴランさんが現実的な意見を述べる。

「街壁の建設は皆さん賛成だと思いますが、その財源はどうしますか?

 この都市の拡張速度を考えれば、かなり広い範囲を囲う必要があると考えられますが」

 皆の視線がレオンさんに集まると、そこも事前に考えていたようで、スラスラと自説を述べる。

「そこは、入街税を新たに導入しようかと思っています。

 元々、このガイン自由都市の税率はかなり低めです。ですから、この平民の首都を守るための壁を建設するためだと丁寧に説明すれば、住民からも大きな反対意見は出ないと考えられます」

 領主のエストも賛成のようだ。そして、私に意見を求める。

「私も良い提案だと思います。おじい様はどう思われますか?」

「街壁の建設は賛成です。そのための増税も良いでしょう。しかし、入街税は反対ですね」

「それはなぜですか?」

 私は全員を軽く見渡してから、その意味を語る。

「この都市で好景気が続いているのは、入街税が存在せず、自由にモノを流通させられるからです。

 ですので、入街税を導入してしまうと物流が滞りますので、かえって全体の税収が落ち込みかねません」

 それを聞いたエストも頷き、私に続きを促す。

「さすがは、この領地の知恵袋ですね。では、おじい様はどうすれば良いと思いますか?」

「そんなに複雑な事はしなくても良いと思います。各種の税率を少しだけ上げて、少しずつかき集めるようにすれば、経済にそれほどの打撃を与えずに予算が確保できると思います。

 ただ、レオンさんが言っていたように、この都市を守るためだという説明は、事前にきちんとしておいた方が良いでしょうね」

 この案が採用され、周知期間を設けた後に、来年度からの増税が決定された。

 ただ、建設終了まで完全な無防備というもの不安なので、壁の建設予定地に簡易な防壁を建設する事も合わせて決定された。