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先祖返りの町作り(再調整版)

第107話 電卓の再開発

 新価格での魔道具販売が始まった頃と時期を前後して、ネリアが産気づいた。今回はとても安産だったようで、思っていたよりも短い時間で出産が終わった。

 生まれた子供は女の子で、後にレアと名付けられた。

 レオンさん譲りの黒髪と、ネリア譲りの茶色い瞳をした、とてもかわいらしい赤ちゃんだ。ここだけを見るとまるで日本人のようだが、肌の色はお母さんに似たようで、とても色白だ。

「この子も将来、結婚する時には多数の男性を泣かせるに違いありませんね」

 私はもはや、ひいひいじじバカを隠そうともせずに発言していた。

 それからしばらくは、ネリアの家をたびたび訪れてレアの世話をさせてもらい、幸せな時間を過ごしていた。

 そして、それからの私は、合金の研究が終わった事による余暇を利用して、新しい魔道具の研究を開始した。

 次に作るものは決めていた。かつてコスト面で開発を断念した、電卓の再開発である。

 合金の配線によってかなりのコストカットが実現できたため、今なら作れるのではないかと考えたためだ。

 ただ、かつての設計のまま配線だけを変更した場合、かなり巨大なものになる上に、まだ巨額の資金が必要になる。そのための改良案も、実はずっと前から温めていた。

 がすこんろの開発で分かった事だが、魔道具形式の魔法式でもある程度の魔法制御力はあるようで、いくらかは位置をずらして魔法が発動できる。

 これを応用し、光の魔道具の発光部分をできるだけ小型化し、位置をずらすようにして発動させれば、LED替わりの発光部品をいくつかひとまとめにできる。

 そうすると、必要な魔法式のプレートや配線がぐっと少なくなるため、合金の配線と合わせて使用すれば、過去にルツ親方に指摘されたような、試作品だけで国家プロジェクト級の資金が必要になる事はないはずである。

 そうやって、光の魔道具の小型化と魔法の発動位置を効率的にずらすための研究を地道に続け、日々が過ぎていった。