先祖返りの町作り(再調整版)
第80話 高等学校設立準備
ソウジキの販売開始から、少したった頃。
高等学校の先生予定の人達の教育が、ようやく終了した。
最初は普通に勉強していた先生予定の生徒達ではあったが、どんどんと高度になっていく内容に困惑を隠し切れなくなり、
「先代様。このような、お貴族様しか知らないような内容を平民の私達に教えてしまって、本当によろしいのですか?」
と、質問するものも現れた。私は微笑んで答える。
「もちろん構いません。知っていると思いますが、我がガイン家は他の貴族達が嫌いです。ですので、ぜひとも勉強を頑張って、傲慢な貴族達の高く伸びた鼻をへし折ってあげてくださいね」
私がそう言うと、生徒の一人が青ざめた顔で告げる。
「そんな事をしてしまうと、私達が打ち首になってしまいます!」
(しまった。これは、前世の表現でしたね)
そう思い、安心させるべく、すぐに説明を始める。
「誤解させるような発言ですいません。これは、私の故郷での比喩表現なのです」
「比喩ですか?」
「ええ。人は自慢げにする時、顎を少し持ち上げて、鼻を上にあげるような仕草をする事があるでしょう?」
「そうですね」
「ですので、得意がっている人の心をくじく事を、私の故郷ではそう表現するのです」
そうやって全員で勉強に励んだ結果、当初の予定通り、中学校卒業程度の内容を教える事に成功した。
ただ、2次方程式の解の公式等で使われる、平方根の一覧表は用意できなかった。
平方根を求める計算式を、私が覚えていなかったためである。平方根をひっ算で求める方法も前世では発見されているが、とても複雑な計算方法になるため、覚えていなかったのだ。
しかし、ルート2やルート3、そして、ルート5は、有名な語呂合わせを覚えていたため、用意する事ができた。ひとよひとよに……というやつである。
そして現在、先生達と、この世界の言葉に合わせた語呂合わせを考えている。
そうやって、高等学校で教えるカリキュラム等を検討した結果、この学校は5年制となる事が決定した。
初等学校で教えているのが、前世であれば小学校2~3年のレベルなので、そこから中学3年レベルまで教える事と、数学のみを教える事を考慮し、少し余裕を見たカリキュラムを組む事になった。
また、教科書の編集作業も同時進行で進めた。この教科書も当初の予定の通り、インサツ技術で量産する事が決まった。
教科書は、基本的には学校から無料で貸し出すが、希望者には相応の金銭で販売する事も合わせて決定した。
ただ、準備が忙しかったため、参考書の編集作業は後日の課題として残した。
先生の人数が決まったため、同時に開ける教室数や、各種経費も計算できるようになり、そこから徴収される授業料も求められた。
しばらくの間は私が校長先生として就任し、この新しい学校の運営や授業内容等を監督する事も決まった。
こうして、あわただしく行われた高等学校の設立準備ではあるが、先生達の協力のおかげで、1年ほどで開校する事ができるようになった。