先祖返りの町作り(再調整版)
第78話 貴族年金と官僚の仕事
メイの結婚式から、しばらくが経過した頃。
私とエルクは、執務室で相談していた。
「俺は当初の予定通り、メイに貴族年金を出すつもりだ。なぁ、ヒデオ。お前はそれに反対なんだって?」
この部屋には、今は子供達がいないので、エルクも昔のような口調で話を始める。
「別に反対している訳ではありません。ただ、仕事もせずに、年金だけをもらうのが問題だと思っているだけです」
「それは、つまり?」
「年金だけをもらってしまうと、あの二人は、遊んで暮らすかもしれません。それは、あの夫婦にとって良い事ではないでしょう?」
エルクは腕組みをして考え、先を促す。
「ふむ……。では、ヒデオはどうすれば良いと思っているんだ?」
「簡単な話です。仕事を与えれば良いのです。ゴランさんには高度な教育を施していますから、彼を高級官僚として雇えば良いと思いますよ」
エルクは納得した様子で一つ頷いた後、許可を出す。
「意義は理解した。ここはヒデオの意見を採用して、ゴランを官僚として採用しよう」
「ええ。それが良いと思います。私の故郷に伝わる古い格言で、働かざる者食うべからず、というものがありますから」
エルクは微笑みながら、話を続ける。
「やはり、ヒデオはいろいろと物知りだな。そうだ、たまにはルースと3人で、昔の親友同士で酒を飲まないか?」
「それはいい考えですね。昔話に花が咲きそうです」
私も微笑んで、飲み会に了承の返事をする。
その後に開かれた、3人での自宅での飲み会では、ワイワイと昔話を楽しんだ。
ただ、エルクとルースももう年なので、あまりたくさんは飲まず、私もチビチビとしか飲まなかったので、醜態をさらすようなものは誰もいなかった。
これはずっと先の話になる。
メイとゴランさんの家は、ガイン家の分家として、代々官僚を輩出するようになり、リスティン王国が崩壊した時には、子孫が閣僚の一人となって、新国家を支える事になるのである。