先祖返りの町作り(再調整版)
第61話 ガイン村からガインの町へ
エストと私による里帰りから、2年ほどが経過した頃。
エルクと私による領地の開発政策は順調に進み、ガイン村は拡大と発展を続けた。今では、村と呼ぶにはかなり無理がある規模にまで発展していた。
そのためエルクは、ガイン村を正式な町とするための手続きを、国王様に申請中である。
また、私が探し当てたにがりの輸入も順調で、豆腐も量産されている。
にがりは、リスティン王国南部の港町周辺であっさりと見つかったため、砂糖を運搬する商人に頼んでツテを探し、にがりを輸送してもらっている。
「トウフ」に使う程度であればそこまでは大量に必要ないため、今では安定した輸入ルートが構築できていた。
ワシ工場の稼働も順調で、日々、ワシを量産し続けている。
ただ、ワシの原料となる木を大量に伐採していたため、私は近隣の森の乱開発を危惧するようになっていた。
そのため、種から苗木を育て、植林を行う技術の開発を最優先で行っている。
また、新たに建設された学校も、順調に運営されている。
ガイン村の特産品である、ワシを利用した教科書も用意している。学校で雇った先生達と共に編集し、生徒に配布しているものだ。
ただ、まだまだワシも高価なため、一人一冊ずつ無料で配布する事まではできず、学校の財産として、生徒達に貸し出す形を取っている。
ノートも同様の理由で作られてはいない。
工房の弟子達も既に一人前に育っていて、工房の運営のほとんどを弟子達に任せている。我らがヒデオ工房の魔道具も少しずつ人気が出て、場所を引っ越して規模を拡大している。
この頃になると、発展した村の様子を聞きつけた他の貴族家から、我が家の財力目当てと思われる、エストやメイへのお見合いのお誘い等が来ていた。
ガイン家の家族は全員、これまで他の貴族達から、さんざん平民上がりの半端貴族と見下されて来たのをよく知っているため、完全に無視している。
貴族達の手のひら返しに、私も良い気分はしていない。
エストやメイには、心から愛せる伴侶を見つけてもらい、幸せな家庭を築いて欲しいと願っている。
また、エストには約束通り、『いべんとはんどら』の魔法を伝授している。
ただ、私が登録している魔法は全て防御魔法だった。
そのため、これを起動している間は他の魔法が使えなくなるエストの事を考え、エストと相談して、攻撃と防御のバランスが良くなるように、登録する魔法をエスト専用にカスタマイズしている。
これによって、エストは魔術師でありながら、一部の魔法であれば無詠唱で瞬時に起動できるようになっている。
ただ、毎朝長い魔法式を詠唱するのだけは、大変そうであったが。