先祖返りの町作り(再調整版)
第48話 発展政策
私が村で最初に行ったのは、学校の建設だ。
と言っても、新たに建物を建てた訳ではなく、無駄に部屋の余っている領主館を開放し、一定年齢の子供を集めて私が文字の読み書きと計算を教えている。
発展の第一歩は、学問からという事だ。
最初の頃は、
「お貴族様のお屋敷でお貴族様に教えてもらう等、恐れ多いです」
という、反応だったが、学校に通う時間帯の子供の労働を禁止し、義務教育のような制度にしたため、最初はしぶしぶ従っていた。
この国の紙は羊皮紙のため、動物の皮を加工する関係で大量にはできず、とても高価だ。
そのため、教科書やノートは用意できなかったが、石板と石筆という黒板とチョークに良く似たものがあったため、勉強に支障はない。
最初の頃は、おそるおそる聞いていた子供達であったが、やはり、子供は大人に比べて柔軟なようで、可能な限りフレンドリーに接していた私の努力のかいもあって、5年たった今では、それなりに親しく会話してくれている。
学校の次に作ったのは、私の工房だ。
(発展のためには、開発資金が必要ですよね)
そう感じた私はヒデオ工房を作って、一人でほそぼそと魔道具を制作している。
私の工房は生産量こそ少なかったが、ルツ工房以外では作れないとされていた小型軽量の魔道具を作成できる事と、伝説の魔道具師、ルツ親方の一番弟子というのも知っている人は知っていたようで、知る人ぞ知るブランドのような扱いになっていた。
ちなみに二代目ルツ工房長は、自分で直接、あの金色の粉を買い付けに来る。
あの粉は工房長に代々伝わる秘伝中の秘伝の扱いで、おいそれとは、他人に取引を任せられないそうだ。
エルクももう30歳になるので、後5年ほどしたら家督を譲り、引退して、のんびりと工房長と学校の先生になる事が私のひそかな目標である。
また、2年ほど前から実験農場を作り、大豆を用いた輪作の研究も行っている。
ただ、これには年単位で収穫量を比較する必要があり、
(早くても、10年くらいで実を結べば良いでしょう)
と思っている。
大豆の有効利用として、ようやく開発できた味噌のレシピを公開し、各家庭で作ってもらっている。
もしこの世界でも味噌料理が受け入れられるなら、いつかは味噌蔵を作ってこの地の特産品としたいが、今は各家庭のおふくろの味となってもらう事を願って、日々、味噌の宣伝を行っている。