先祖返りの町作り(再調整版)
第28話 国家プロジェクト
それから私は、現代初の電卓の魔道具の設計を始めた。
何日かが経過し、概略ぐらいはできた。概略を設計して見て判明した事だが、これは恐ろしく巨大になる。
何十個もの光魔法の魔法式のプレートを用意し、それらと本体の魔法式を繋ぐ。もはや、フルタワーパソコンどころか、小屋が必要な巨大さになっている。
最初に考えた電卓の面影は、ボタンの並びにしかない。
とりあえず、改良案の検討も含めて親方に相談だ。
「親方。完全新作の魔道具の概略を、仮設計してみました」
「また、こないだのセンプウキみたいな、変なもんじゃないだろうな?」
「いえいえ。これは画期的なものですよ。これが量産できれば、世界が変わります」
そして説明を始めると、親方の顔は驚愕に代わる。
(これは、いけますかね?)
ほくそ笑んでプレゼンを続けると、だんだん疲れたような顔になり、親方は長い溜息を吐いた。
「確かに、これは画期的だ。まさに世界が変わる、歴史に残る大発明といっていい。画期的過ぎて、もう驚き疲れた。
だがな。これは作らん。いや。作れん」
「え? なぜですか?」
「本当に分からないのか? 少しは原価ってものも考えろ。この馬鹿が」
そして、親方は長い説明を始めた。
「複数の魔法式のプレートを連動させる技術は、現代では失われたものだ。これができていたのは、古代魔法文明の出土品だけだ。これができる方法を思いついただけでも、歴史に名が残る大発見だがな。
大量の光の魔道具を配置するだけで、恐ろしく高価になる。そして、大量のボタンが必要で、その上、それらを繋ぐ大量の銀線。
ざっと見ただけでも、大金貨10枚や20枚では収まらないだろうな。100枚、200枚の単位だろう。
そんな大金は、おそらく国庫にしかないぞ?」
溜息を吐きながら、説明を続ける親方。
「おそらく、このアイデアを実現させるためには、試作品だけで国が動かないといけないような大金が必要になる。
だから、これを試作するためには、お貴族様どころか国王様を説得しないといけないんだよ。
平民の魔道具師の手には、とてもおえないものだ。
ただ、これに使われているアイデアの数々は歴史に名が残る大発明なので、アイデアだけ残して、別のものに応用しろ」
私もぶるっと震える。下級貴族でも簡単に首が飛ばせる権力があるのに、国王とか怖過ぎて近寄りたくない。
巨額の資金が必要だろうとはうすうす感付いていたが、まさかの国家プロジェクト級だとは……。