先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第195話 本当の願い
それから、二年ほどの歳月が経過した頃。
魔力ジドウシャの運用ノウハウの蓄積や、問題点の洗い出しと改良が順調に進んでいた。
今は馬車と歩行者で運用しているシンゴウキの活用も、次第に理解が進んできており、もう少し時を置けば、都市内部での魔力ジドウシャの運転も許可される予定になっている。
「魔力ジドウシャを使えば、里帰りが簡単になるのではないでしょうか」
ある時、そのことに気づいた私は、魔力効率を完全に無視するように改造した魔力ジドウシャの開発を始めた。
私自身が運転することを前提にしているので、自作の魔石が使い放題になるし、いつでもどこでも魔力の補充が可能になるからだ。
まずは手始めにと、魔力もーたーの魔法式に手を加え、パワーとスピードを大幅に強化した。
あすふぁるとで舗装されていない道を走り抜けるため、車高を高めて走破性も強化した。
後部座席にあたる部分には、これまた特別製の小型レイゾウコを設置していて、日持ちの関係でこれまでお土産にできなかった、新しい食材等を持ち帰ることが可能になった。
ちなみに、里帰りの際に持って帰ったぱうんどけーきは、子供たちに大好評であった。
車高を高めるなどの改良を加えたため、私はこの車を「じーぷ」と名付けたのだが、みんなは半ばあきれ顔をしながら、「初代様専用機」と呼んでいる様だ。
この専用機を使うことにより、悪路を走り抜けるにもかかわらず、これまでの四分の一以下の時間でシユス村に到着できるようになっていた。
バンパーや車体そのものもかなり頑丈に作り込んでいるため、途中で魔物と遭遇しても、そのまま跳ね飛ばせるようになったのも、時間短縮に一役買っていた。
また、この専用機を活用することによって、他の地域への旅行も簡単になっていた。そのため、これまで以上に頻繁にクリスさんに会いに出かけるようになっていた。
その結果、彼女もご満悦の様子で、私もとても満足である。
ただ、これまで以上にイチャコラしている私たちの様子を見せつけられる島の里のみんなの視線が、とても生暖かくなっていったのではあるが。
クリスさんは、専用機の助手席に乗り込んでのドライブが、とても気に入ってくれたようだ。
「ヒデオ様、風を切って移動するのが、これほど気持ちのいいものだとは知りませんでした。もっとスピードを出してください」
クリスさんはスピード狂の素質があるようで、何度も運転させてほしいとおねだりされていた。
「クリスさん。魔力ジドウシャは、使い方によっては凶器になるのです。人を跳ねたら大惨事になりますので、私の領地に来た時に、ちゃんと教習所に通って運転免許を取得してください。運転はそれからでないと、許可できませんよ?」
私がそのように説得すると、いつも子供のように頬を膨らませて不満顔をする。どうもクリスさんは、車の運転に関することになると、少し子供っぽくなるようだ。
「うっ……」
その少し拗ねた表情があまりにも可愛らしくて、私は思わず運転を交代しそうになったのだが、ぐっと我慢して耐えていた。
そんな私の心の動きは、彼女には手に取るように分かってしまうようで、私の動揺した顔を見るために、わざとやっている節すらある。
自分の心の内側で、彼女の存在が大きくなり続けた結果、私はある深刻な悩みを抱えるようになっていた。
何もかも投げ捨ててしまって、彼女と添い遂げてしまいたい。
そう、強く願うようになっていた。
そうなった後の生活を少し想像してみれば、それだけでとても幸せな気持ちになってしまう。
しかし、ここまで増大した平民の力をもってすれば、もう少しだけ頑張れば、私の壮大な野望も完遂できるはずだ。
(ここで無責任に投げ出してしまっては、かつてエストに指摘された、私の責任が果たせなくなってしまいます)
私はそのように何度も繰り返し自分に言い聞かせ、自分の願望を誤魔化し続けるのであった。