先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第193話 魔力ジドウシャ
それから、三年の時が過ぎ去った頃。
ようやく自動車が完成していた。
前もって進めていた道路交通法などの関連法の整備や、セネブの町までの高速道路の建設工事も、合わせて完了していた。
私は、当初、開発していた自動車のことを「デンキジドウシャ」と呼んでいた。
しかし、ダイガクの物理学部で電気については教えており、その呼び名もそのまま「デンキ」であった。
そのため、以下のようなツッコミを受けることになっていた。
「なぜデンキジドウシャなのですか?」
そこで、「魔力ジドウシャ」と名称を変更していた。
スピードメーターについては、古代の魔道具のダイヤルの魔法式を応用していて、単位時間あたりの車軸の回転量を求め、そこからタイヤの円周の長さを利用して進む距離を求めることで表示していた。
また、エンジンにあたるモーターの魔道具が車体後部にあるため、前世でいうところのRR車に相当している。
その結果、車体前部が短くなっており、私には少し不格好に見えていた。
しかし、そういった余計な前提知識のないこの世界の人々にとっては、別段おかしなデザインではなかった模様だ。
同時に開発した「シンゴウキ」も、順次、設置作業が進んでいる。
しかし、まだまだシンゴウキに従う行動様式が浸透していないため、二年から三年ほどは試験運用期間として、周知徹底を図っていく予定になっている。
魔法で動く乗り物の登場は大ニュースとなって国中を騒がせたが、ガイン自由都市の住民にとっては、新技術の実用化はそれほど珍しいことでもなくなっていたため、レイゾウコの時ほどの大騒ぎにはなっていない。
しかし、他の領地ではそれこそ国中をひっくり返すほどの大騒ぎになっている模様で、噂によると国王が欲しがっているそうだ。
ただ、私の王侯貴族嫌いは既に知れ渡ってしまっているため、私に知られないように入手する方法を模索しているのだとか。
「そんなに難しく考えなくても、正規の手順で購入すればちゃんと売りますよ?」
私はそのように周囲に説明していたのだが、平民と同列に予約するのは、プライド的に無理なのだそうだ。
「まったく。そんなにプライドが大事なら、私に頼らずに自分たちで作ればいいのです。ご立派なプライドに見合うだけの、優秀な能力があるのであれば、ですがね」
私は、そう、吐き捨てていた。
街中では、歩行者も含めてシンゴウキに従って移動する必要があるため、魔力ジドウシャは、まだ都市内部での運転を許可していない。
しかし、セネブの町までの高速道路はシンゴウキのない一本道であるため、先に「とらっく」を実用化していて、原油の試験輸送を開始している。
高速道路は魔力ジドウシャ専用の道路になっているため、両脇を簡単な柵で囲っており、歩行者や馬車は進入禁止になっている。
そのため、安全面をそこまで厳密に考慮しなくても良くなっており、試運転にはちょうどいいと判断していた。
前世を知る私にとっては、少々、物足りないスピードしか出せない魔力ジドウシャであるが、それでも馬車よりはかなり速くなっていた。
その上、一度に運べる量も増えたため、原油の輸送面での不安は払しょくされていた。
その様子を見た官僚たちは、輸送革命が起きると理解したようで、高速道路網の整備計画を前倒しで実施してくれるようになった。