先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第169話 古代の魔法式
それから、一年ほどが経過した頃。
私はケントさんとの約束の通り、入手した古代の魔道具から得られた情報をまとめ、書籍として一般販売していた。
慎重に記録を取りながら分解を進めた結果、やはり、後期古代魔法文明時代のものだった模様で、肉眼では魔法式が読めなかった。
そこで、ケンビキョウを使って詳細に調べてみた結果、ほとんどの部分は損傷が激しく、解読不能であったのだが、比較的、損傷の少ないダイヤル部分の周辺の魔法式だけは判明していた。
これだけでも得られるものは多かった。
ダイヤルの回転位置を魔法式で検出する方法が判明し、また、一本の配線で魔力の多寡を調整したり、検出したりする方法も判明したのである。
これらにより、様々な魔道具が改良できた。
まず初めに行ったのは、魔力の多寡を判別する機能を応用した魔力計の作成である。これによって、魔道具に使用する塗料の改良などが容易になった。
また、自作した魔力計を利用し、詳細な魔力消費量を計測してみた結果、やはり、刻み込む魔法文字を小さくするほど、より少ない魔力で動作することも判明していた。
「魔法式のプレートを小型化するほど、より速く、より少ない魔力で動作していますね。これは、やはり、『半導体』の『集積回路』と同じ特性になっていますね……」
このため、より小さい魔法文字を刻み込むための研究も開始することを決めた。
また、魔力計に利用した機能をさらに応用し、これまで多くの配線が必要になっていた魔道具の改良も行っていた。
一本の配線で複数の信号が処理できるようになったため、大幅なコストカットに成功したのである。
この改良により、デンタクの魔道具とトケイの魔道具は、ぐっと安価に提供できるようになった。
さらに、ダイヤル機能の部分の実装として、無段階の火力調整機能を搭載したがすこんろの魔道具も開発していた。
同じ機能を利用した、温度調節機能を改良したくーらーの魔道具も同時に開発していた。
私はこれらの応用も含めて、魔法式を一冊の本にまとめて発表していた。
これらの改良のトッキョを申請してはいたのだが、その利用料は無料に設定していたため、誰でも自由に使うことができるようにしていた。
トッキョを申請した理由については、先ほどの解説本の最初のページに、以下の様に記述して説明していた。
「本来であれば、これらのトッキョは申請せずにいたかったのですが、それをしてしまうと、無関係の第三者がトッキョを取得してしまい、利用料金が発生してしまう危険性がありました。そのため、無料で使えるトッキョとして、予防的に申請しています」
この解説本を発表すると、先ほどの無料のトッキョと併せて、さすがは魔道具の父だと、私の名声がさらに上がる結果となってしまった。
「これは、私の功績ではありません。平民のために使うことを条件に、安く古代の魔道具を譲ってくださった、冒険者のケントさんの功績です」
この件で私を称賛する人に出会うたびに、私はそのような説明を繰り返すことになるのであった。