先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第131話 上納金
えあがんの配備が始まって、少しばかりの時が過ぎ去った頃。
実弾射撃訓練の視察に訪れていたシゲルが、目を輝かせながら私に話しかけてきた。
「さすがは、ひいおじい様ですね。これで、我が軍は、宣言通りに最強になったのではありませんか?」
私は大きく頷きを返し、肯定する。
「ええ。私もそう思います」
ここで、シゲルはある意外な提案を始めた。
「そうなってくると、いっそのこと、王国に収めている上納金を止めてしまいませんか?」
上納金というのは、各貴族家が集めた税金の中から一定割合を国庫に納める制度のことである。
私は少し首を傾げ、それに否定的な意見を述べる。
「しかし、それをやってしまうと、王国と全面戦争になってしまいますよ?」
「でも、ひいおじい様は、負けるとは思っていないのですよね?」
私はそれに頷きを返し、それからその意味することを語る。
「もちろん、負けはしないでしょう。ですが、その場合、シゲルが新しい王様になってしまいますよ? あなたが王様になりたいのでしたら、私は全力でサポートしますが」
私がそう念を押すと、シゲルはふるふると首を振って前言を撤回する。
「とんでもない! 私はできることなら、領主の地位も優秀な平民に代わって欲しいぐらいなのに、王様なんて面倒な立場はごめんこうむりますね」
私はそれに微笑みを返し、同意する。
「私も、国王の一族の初代なんて地位はごめんこうむりますから、シゲルの気持ちは良く分かります」
そうやって、私たちは苦笑しあった。
「では、上納金はこれまで通り、王国に収めますね」
シゲルはそうやって現状維持を決定すると、私にある質問をしてきた。
「でも、ひいおじい様は、この状況がずっと続くとは考えていないのでしょう?」
「ええ、もちろん」
「それは、どのくらいで変わりますか?」
「早くて、後二百年といったところでしょうか」
その年月の長さに、シゲルはとても驚いた表情を見せる。
「ひいおじい様には、とても遠大な計画があるのですね……。できれば、その計画の一部でも聞かせてもらえませんか?」
その質問を受け、私は顎に手を当ててしばらく考えを巡らせ、野望の一部を語ることを決意した。
「私は、この国を、平民たちが自分自身で治めていく国にしたいのです」
私のその返答を聞いたシゲルは、目を見開いて驚いた様子で確認を取る。
「そのようなことが可能なのですか?」
私はそれに大きく頷きを返し、肯定する。
「ええ。ただ、そのためには、もっと平民の学力を上げる必要があります。シゲルは協力してくれますか?」
私がそう言うと、シゲルは大きく頷いて賛同してくれる。
「もちろんです。そうなってくれれば、私の子孫たちも領主という重荷から解放されますからね」
そうやって、領主の了解を得た私は、さらに高度な学問を教えるための学校の建設計画を、前倒しで推進するのであった。