先祖返りの町作り
第230話 エピローグ
ヒデオ・キョウワ国の建国から、
1年ほどが経過した頃。
私はあれから、
大統領府、ヒデオ工房、ダイガクで、
仕事の引継ぎを済ませていた。
特にヒデオ工房では、
年に一度ほどのペースで私が直接訪れ、
秘伝の粉を手渡す約束を、
副工房長のニーナと交わしていた。
ユキムラとの約束もあるので、
たまには第二の故郷となった、
ガイン自由都市を訪れ、
様子を確認する意味合いもある。
こうして全ての後事を片付けた私は、
あの約束を果たすべく、
島アルクの里を訪れていた。
真っすぐにクリスさんの小屋へと向かい、
彼女を呼び出す。
「クリスさん。
大変長らくお待たせして申し訳ありません。
今こそ、あの約束を果たさせてください」
私はそう前置きして、
彼女にプロポーズを始める。
「私をあなたの所有物にしてください。
そして私の妻となって、
私の子供産んではいただけませんか?」
クリスさんは両目を見開き、
ポロポロと大粒の涙を流しながら、
返事をしてくれる。
「はい……。はい。
もちろん、喜んで、
その申し出を受けさせていただきます」
私は彼女を受け止めるべく両手を広げると、
クリスさんが真っすぐに私の胸に飛び込んできた。
そして嗚咽をこぼしながら、
うれし涙に浸ってくれている。
「ああ……。ああ!!
夢ではないのですよね?
この日、この時を、
どれほど待ち望んだ事か……」
そう言って、
泣き崩れそうになる愛しい人を、
私は両手で支え、強く抱きしめて、
これが現実だと体全体で伝える。
こうして、クリスさん改め、
クリスと私は夫婦となった。
これから末永く、
幸せな結婚生活を続ける事になる。
そして、250年ほどが経過した頃。
クリスはかつての宣言通り、
私の子供を出産してくれた。
生まれた子供は男の子で、
驚いた事に、先祖返りであった。
まだ事例が少なくて確認できないが、
おそらくは、先祖返り同士であれば、
生まれてくる子供も先祖返りになるのだろう。
やがて成長したこの子は、
森の祭司長と恋仲となり、
二人は結婚して子供を設ける事になる。
こうして、数千年の長い時をかけて、
ゆっくりと先祖返りが増えてゆくのであった。
─── 完 ───