先祖返りの町作り
第207話 内乱
それから、2年の時が過ぎ去った頃。
すぐにでも勃発すると考えられていた反乱だが、
思いの外、平穏を保っていた。
もし、
貴族達がガイン自由都市との取引を停止して、
兵糧攻めを行うようであれば、
その時はこちらから打って出るしかないと、
思われていたが、そうはならなかった。
どうも、ガイン自由都市が栄えるのは嫌だが、
自分達の懐が痛むのはもっと嫌という、
かなり自分勝手な理由によるらしい。
それによって、
水面下ではかなりの緊張状態が続いているが、
表面上は奇妙なほどの均衡状態を保っていた。
しかし、
平民の移動を厳しく取り締まった事により、
不満は爆発寸前であった。
本当にどうにもならなくなれば、
最後はガイン自由都市へと、
逃げ込めば良いというのが、
心のよりどころになっていたらしい。
それがなくなった事による不満は、
かなりのもののようで、
相当追いつめられているようだ。
しかしそれでも、
2年もの時が稼げたことにより、
準備は万端になっていた。
だいなまいとをはじめとした、
いくつかの新兵器の準備も完了しており、
いつでも王国軍全軍を相手にしての、
戦争が始められる状態になっていた。
そんなある日。
ついにその知らせが届けられた。
「平民による反乱が勃発しました!
王国西部のスルト村で、
貴族からの解放を叫んで、
平民達が領主館を占拠した模様です!!」
領主の執務室で仕事をしていた私達の元へと、
官僚の一人が、
興奮した様子で第一報を届けてくれた。
ユキムラはゆっくりと頷き、
対策会議の開始を指示する。
「ついにこの時が来ましたか……。
早速対策会議を行います。
主だったものを集めてください」
こうして始まった会議ではあるが、
対策は既に何度も話し合われていたため、
特に混乱もなく進んでいった。
この会議で決定された主な内容は、
以下のようなものである。
・ガイン自由都市の四方で熱キキュウを飛ばし、
ボウエンキョウを使っての監視を強化する。
・魔力ばいくを使った偵察部隊を各地に派遣し、
情報収集を強化する。
この部隊全員にもボウエンキョウを配布する。
・もし反乱に失敗した場合は、避難民を、
ガイン自由都市で受け入れるとの触れを出し、
保護すべく準備を進める。
この他にも、
いろいろと細々とした内容を詰めていた時、
反乱の第二報が届けられた。
「北部のバラタ村でも、
同様の反乱が発生した模様です!!」
それを聞いた私が、思わず独り言をこぼす。
「これは、思っていた以上の速度で、
国中を巻き込んだ内乱に発展しますね……」
私のその予想に、
反対意見を述べるものは誰もいなかった。