Novels

先祖返りの町作り

第192話 領主の休暇事情

この頃、ヘレナさんは第2子を出産していた。

生まれた子供は女の子で、
後にニーナと名付けられた。

黒髪に青い瞳をした、
玉のようにかわいらしい赤ちゃんだ。

ヨシツネは娘の誕生をことのほか喜んでいた。

仲の良い二人であるから、
すぐにでも第2子を授かるだろうと、
思われていたが、
思いのほか時間がかかったのは、
ヨシツネが忙しかったからだろう。

領主に就任してからのヨシツネは、

「領主がこれほど忙しいとは、
 思っていませんでした。

 デートの時間が取れないと愚痴る妻を、
 なだめすかすのが大変です」

と、苦笑交じりに語っていた。

彼はストレスがたまると、
お酒持参で私の自室を訊ねて来て、
愚痴をこぼして発散していた。

これではいけないと思った私が、

「ヨシツネ。こうしませんか?
 私がしばらく領主代行をしますので、
 長期休暇をとって、
 ゆっくりと英気を養ってください」

と、提案していた。

それからは、
ある程度の頻度で長期休暇を取るようになり、
夫婦仲も修復されていったようだ。

もともと仲の良い夫婦であるため、
そのかいもあってか、
望まれていた第2子の懐妊となったのであった。

「娘というのは、
 こんなにもかわいいものなのですね」

と、語るヨシツネは、もうデレデレであった。

「私達男親からすると、
 やはり娘というものは、
 とてつもなくかわいいものですよね」

と、私も言っていたので、
おそらく同じような顔をしているのだろう。

「大おじい様。本当にありがとうございます」

「どうしたのです? いきなり改まって」

突然お礼を述べ始めたヨシツネに、
私は何事かと思った。

「大おじい様が協力してくださったおかげで、
 長期休暇がとれるようになりました。

 そのおかげで子宝にも恵まれて、
 こうして娘とも出会う事ができました」

「私もニーナに出会えてとても幸せですから、
 お礼にはおよびませんよ?」

私とヨシツネはそう言って、微笑み合った。

(領主といえども人間ですから、
 時には長期休暇も必要ですね。

 これからは定期的に長期休暇を取得するように、
 提案する事としましょう)

私はそのように、心に決めたのであった。