先祖返りの町作り
第171話 開発目標の優先順位
この頃になると、
少し開発のスピードが落ちていた。
「やはり、開発目標を欲張り過ぎですね……」
ダイガクと共同で研究を進めていたため、
同時に複数の内容を研究していた。
そのため、
一つ一つの研究内容に私の手が回らず、
いろいろと行き詰まりを見せていた。
「優先順位を決めて開発しますか」
とりあえず必要なのは、
ハンドルやアクセル、ブレーキといった、
基礎的な構造だろう。
ハンドルについては、
パワーステアリングを目指さないのであれば、
それほどの難易度はないと思われる。
アクセルについても、
ケントさんが発見した古代の魔道具で得られた、
無段階調整のプログラムコードが、
そのまま応用できるだろう。
ブレーキについては、
当初の予定通りに、
油圧式のものを開発すれば良いはずだ。
「その次に目指すのは、
『サスペンション』ですかね?」
サスペンションについては、
やはり、ダンパーと呼ばれる部品が、
一つの難所と思われる。
これについては、
ある程度腰を落ち着けて開発する以外に、
方法がないと思われる。
「これで『自動車』の本体は、
だいたい開発できますかね?」
私はその次の目標として、
自動車が完成した後に必要となるものについて、
考えを巡らせた。
「いくらあすふぁるとの道路があるとはいっても、
馬車と同じ道路で輸送していたのでは、
効率が悪いでしょうね」
私はここで、
自動車専用の高速道路の必要性に気付いた。
馬車と自動車ではスピードが違いすぎるため、
同じ道路で輸送していたのでは、
渋滞が発生する可能性が高い。
「とりあえず、
セネブの町までの施設を最優先に、
高速道路網の建設計画を
リョウマと相談しましょう」
高速道路の運用だけでなく、
街中で自動車を走らせるためには、
様々な法整備も合わせて必要だと気付く。
ウィンカー等の基本的な機能に関する規制も、
必要となってくるだろう。
「その他には、速度制限等の各種道路標識、
信号機や横断歩道も設置が必要ですね」
信号機については、
すとっぷうぉっちやトケイの魔道具を応用して、
空ループを利用すれば作れるはずだ。
速度制限等と合わせてこれらを守らせるためにも、
免許制度も必要になると思われる。
「今すぐでなくても構いませんが、
これは、法整備だけでもかなりの大仕事に、
なりそうですね」
こうして私は、
各種の目標の優先順位設定を終え、
一歩ずつだが着実に、
さらなる近代都市へと向けて、
歩みを進めたのであった。