先祖返りの町作り
第159話 軍事機密保護法案
私は必要な法整備をまとめた書類を作成すると、
急いで領主の執務室へとんぼ返りした。
そして、
領主のリョウマと条例の立法担当の官僚と一緒に、
会議室へと入り、法案の説明を行った。
リョウマが若干引き気味になりながら、
私に質問を投げかける。
「大おじい様は、
どんな新兵器を作るつもりなのですか?
ここまで厳格な情報統制が必要なものとは、
いったい……」
私はニッコリと笑顔で微笑み、説明を行う。
お願いする立場なので、印象は大事だ。
「えあがんよりも、
かなり強力な武器になる予定です。
これがあると、
貴族どもをまとめて吹き飛ばせます。
ですから、
これの作り方が他領の貴族に渡ってしまうと、
こちらの被害が甚大になるので、
これらの法案が必要なのですよ」
私はニッコリと微笑んでいるのに、
なぜか皆震え上がっているように見える。
「ふ、吹き飛ばしてしまうのですか?
なにも、
そこまで無理やり軍備を強化しなくても……」
私は笑顔を深めて、
できるだけ丁寧に説得を試みる。
「おや? まさかリョウマは、
あの馬鹿どもに対して、
手心を加えるつもりではありませんよね?」
リョウマの額から汗がぶわっと吹き上がる。
こんなにニッコリ笑顔でお願いしているのに、
失礼な反応である。
「い、いえ、まさか!!
ただ、この新兵器の内容については、
領民に説明できないですよね?
で、ですから、
この条例を施行するためには、
領民にも説明できる理由がですね……」
私はウンウンと頷きながら、
反対理由を丁寧に潰していく。
「安全保障上の理由で良いのではないでしょうか?
どうせ今回の件がなくても、
これからダイガクで開発されるであろう、
新技術の中には、
軍事転用が可能なものも含まれてくるはずです。
それらに対しての法案だと説明したのでは、
ダメですか?」
私は小首を傾げて、
あくまでニッコリ笑顔を維持し、
優しくお願いを繰り返す。
まあ、背後から、
怨念めいたオーラが出ているかもしれないが、
そんなものは気のせいである。
リョウマがヒッと息をのむ音が、
聞こえたような気がするが、
これも気のせいに違いない。
結局、リョウマが怯えて……、いや失礼。
納得してくれて、官僚に指示して、
この法案の立法作業に入ったのであった。