先祖返りの町作り
第134話 決意
それからしばらくが経過した頃。
私は里帰りしていた。
新しい子孫の誕生等、
祭司長にいろいろと外の世界の出来事を、
面白おかしく伝えていた。
祭司長はコロコロと笑いながら、
私の土産話を聞いてくれている。
彼女は、私よりもかなり年上で、
長い年月を生きているはずであるが、
その笑顔は、
どこまでも素朴さが残る素敵なものだ。
(ああ。私はとっくの昔に、
この笑顔の虜になっていたのですね)
私はこの時になって、ようやく、
自分の恋心をはっきりと自覚した。
その時、ふと、
エストの訃報を知らせた時の様子が、
思い浮かんだ。
エストの旅立ちを知った祭司長は、
うつむき加減で、ただ一言、
吐き捨てるようにしてつぶやいた。
「これじゃから、先祖返りの長すぎる寿命は、
呪いの類じゃというのじゃ」
その言葉を思い出した時、
私はある事に気付いた。
(私一人ではとても耐えられない、
子供達との別れも、祭司長様と二人でなら、
きっと……)
そこまで考えを進めた後、
私はある事を強く決意する。
(いつか、王国での仕事を全て終えた時、
その時こそ、私は……)
その時、チラリと、クリスさんの顔が浮かんだ。
私は心の中でだけ、そっと、
クリスさんに平謝りしながら、
祭司長との楽しい会話を続け、
今回の里帰りを終えた。