Novels

先祖返りの町作り

第117話 大おじい様

未だ、ガイン自由都市軍の設立の、
熱狂冷めやらぬ頃。

クレアさんは、第2子を出産した。

生まれた子供は女の子で、
後にリズと名付けられた。

銀髪に緑の瞳という、
お母さんにとてもよく似た、
かわいい女の子だ。

ただ、カズシゲとは違い、
しずしずといった感じで泣く、
少しおとなしい感じの赤ちゃんである。

3歳になったカズシゲは、
妹ができた事をとても喜んだ。

「大おじい様。僕はリズが守れるぐらい、
 強いお兄ちゃんになりたいです」

カズシゲは、体を動かす事が好きな様子で、
いつも外を駆け回っている。

そして、妹ができた事で奮起し、
シゲルに剣を習いたいと申し出たようだが、
さすがにまだ幼過ぎるため、
もう少し大きくなってからと、
条件付きで許可をもらっていた。

ちなみに、大おじい様というのは、私の事だ。

実は、私の里の昔話をしていた時、
祭司長の呼び名がひいひいひいおばあ様では、
長すぎると感じたため、
大おばあ様と説明していた。

そうすると、いつの間にか私の呼び名も、
大おじい様になっていた。

なんだか、祭司長と夫婦になったようで、
少しこそばゆいのではあるが、
悪い気はしないため、そのままにしている。

また、この頃には、私はカント将軍に、
ガイン自由都市軍の訓練メニューについて、
相談を受ける事もあった。

「胸の熱さが残っているうちに、
 徹底的に鍛え上げたいですからな」

鉄は熱いうちに打て、という事らしい。

そこで私は、個人の武勇に関する訓練は、
将軍に全面的に任せ、
連携訓練の重要性を説いた。

「個人が強いに越した事はありませんが、
 軍として連携ができるようになれば、
 その強さを何倍にもする事ができます」

「それは分かるのですが、
 そこまで重視する程の事ですか?」

私は一つ頷いて、例を挙げる。

「例えば、
 個々人でバラバラに戦っている集団と、
 お互いが連携し合い、
 カバーし合って戦っている集団を、
 比較してみてください。

 どちらがより厄介かは、
 すぐに答えが出るかと思います」

私は別の例も挙げる。

「他には、軍として、
 指揮官の命令をすぐさま反映できる場合、
 このような陣形を作って対応する事も、
 可能です」

私はそう言って、
鶴翼の陣や縦深陣の説明を行った。

「なるほど。お貴族様には、
 そのような戦法も、
 伝わっているのですか……」

カント将軍は、
うなりながら納得してくれた様子だ。

それから彼は、厳しい訓練を、
ガイン自由都市軍の各員に課していたが、
誰一人脱落する事もなく、
訓練に励んでいるらしい。

「初代様の演説が効いていますからな。
 ガッハッハ」

カント将軍は、そう笑いながら、
いつも自軍がいかに精強になってきているかを、
周囲に自慢するようになっていった。