Novels

先祖返りの町作り

第104話 半自治領

また、この頃には、
発展したガインの都市の様子を見た、
貴族達からの反発が、かなり強まっていた。

ある貴族にいたっては、傭兵を動員し、
挙兵するそぶりを見せるものも、現れていた。

そんな中、私は領主のエストに、
この件についての相談を持ち掛けられていた。

「おじい様。万が一、
 このまま挙兵されてしまった場合、
 今の戦力で守り切れるでしょうか?」

私は微笑みながら、頷いて肯定する。

「もちろんです。
 挙兵したとしても、
 その主力は平民の傭兵達です。

 私の所にも、彼らが命令に逆らえず、
 しぶしぶ従っているという様子が、
 報告されています。

 そのような軍隊の士気が、
 高いはずがありません」

それでも、エストは少し不安な様子で、
質問を重ねる。

「それは分かっていますが、
 やはり、数が脅威です。

 いずれは、常時雇用してる傭兵達を、
 拡充する必要があるでしょうが、
 今すぐには間に合いませんよね?」

「確かに、それは今後の課題ですね。
 ですが、もし今挙兵されたとしても、
 こちらには私がいます。
 必ず追い払って見せましょう」

エストは、目をぱちくりとさせて、
私の自信満々な様子の根拠を尋ねる。

「それはたのもしいのですが、
 おじい様には、何か、
 必勝の作戦があるのですか?」

私は再び頷いて首肯し、その根拠を語る。

「ええ。いざという時は、
 私が単騎で後ろから近付き、
 指揮官のいる辺りに、
 遠距離から『いんふぇるの』をぶち込みます。

 護衛の騎士達ごと、
 指揮官を焼き払ってみせましょう」

「お、おじい様。そんな事をしてしまえば、
 おじい様は再び……」

「ええ。私は再び、
 『耳長の悪魔』と恐れられるでしょうね。

 ですが、この都市は、
 既にここの領民達だけのものではありません。

 この国の全ての平民達の希望だと聞いています。
 ここを滅ぼされる事を考えれば、
 私が背負う悪名など、
 気にするほどの事ではありません」

エストとそんなやりとりをしていたが、
結局、実際に挙兵する貴族は、現れなかった。

動員されそうになった傭兵達の中には、
それに嫌気がさして、
ガインの都市の傭兵団に鞍替えするものも、
多数現れたほどである。

そのため、ガインの都市の傭兵の中には、
職にあぶれるものも現れ始めた。

軍備の強化が急務だと考えていたエストは、
これを好機としてとらえ、
常時雇用している傭兵達を拡充し、
彼らを「ガイン警備隊」として組織した。

これは、名前こそ警備隊であったが、
実質的には常備軍である事は、
誰の目にも明らかであった。

そのため、ガインの都市は、
しだいに半自治領として、
認識されるようになっていった。

これはずっと先の話になる。

平民達が立ち上がり、
貴族達の支配からの解放を叫んで、
反乱が勃発したその時には、
ここで組織された、ガイン警備隊の後継組織が、
反乱軍の主力として、
活躍するようになるのである。