先祖返りの町作り
第47話 孫
          領主になって、5年ほど経過したある日。
          
          64歳になった私は、孫のエストと同じ部屋にいる。
          孫と言っても実の孫ではなく、
          エルクとルースの第一子だ。
          
          今、ルースのお腹には、
          待望の第二子が宿っている。
          
          私の無限の寿命では、未来永劫、
          領主をしなければならないと気付いた時、
          エルクに頼んで養子縁組をしてもらい、
          二代目領主予定の跡取りとなってもらっていた。
          
          自由な傭兵稼業をやっている、
          エルクは嫌がるかと思ったが、
          元々傭兵の最終目標は、
          騎士様になる事だったので、
          
          「お貴族様にしてくれるんなら、別にいいよ」
          
          と、案外あっさり了承してくれた。
          
          そうしてエルクは、エルク・ウル・ガインとなり、
          奥方となったルースと、生まれた我が子と一緒に、
          ガイン村に引っ越している。
          
          ちなみに、エストの名前は、
          エルクの「エ」とルースの「ス」を使って、
          響きの良いように命名したと、
          エルクが以前に教えてくれていた。
          
          貴族が平民と養子縁組する等、
          前代未聞の事らしいが、
          私自身が平民上がりの半端貴族なせいか、
          養子縁組を申請した時は、
          驚かれはしたが、
          特に問題なく手続きは終了した。
          
          一般的な貴族であれば、
          華やかな社交パーティー等もあるらしいが、
          平民上がりの私には、そんな誘いがないため、
          貴族とは言っても、貴族との付き合いのない、
          かなり特殊な貴族になっている。
          
          エルク夫婦も、最初は興味があったようだが、
          
          「招待されてもいないのに、
           無理に押しかけても、
           嫌な思いをするだけですよ?」
          
          という、私の説得によって、
          今では特殊な貴族の立ち位置に、
          あまり疑問は感じていないようだ。
          
          ちなみに現在、
          この屋敷には数人の老婆のメイドさんがいる。
          
          少人数で使うにしては、少し広いため、
          村の雇用を良くする意味でも、
          農作業が難しくなった老婆を雇った。
          
          私の膝に、ちょこんと座ったエストは現在4歳で、
          私に昔話をねだる。
          
          「おじい様。
           また、おじい様のお里の話をしてください」
          
          エストはなぜか、
          私の幼少時代の話を聞くのが好きだ。
          特に私が過去にやらかした、
          失敗談が大好きだ。
          
          男の子なのに、ルースによく似た女顔で、
          
          (将来はさぞかし、
           女性を泣かせるイケメンになるのでしょうね)
          
          と、早くもじじバカをさらしている。