SOLID STATE ANGEL ver.1.1
第73話 大隊長
作戦通りに02を真正面から撃破した俺たちには、ぜひとも一杯おごらせて欲しいという戦友たちが殺到し、全てに応じていたらアル中間違いなしの状態になっていた。
そんな折、アーロン連隊長からの呼び出しを受けた俺は出頭し、その辞令を受けた。
「ジェフリー中隊長。今回の天使型02の撃破における貴官の功績は極めて大である。よって、貴官をアーロン連隊所属の大隊長に任じる」
「はっ。拝命いたします」
俺は敬礼を返し、素直に辞令を受け取る。そうすると、連隊長は意外な命令を追加した。
「ジェフリー大隊長。早速で悪いが、貴官に新たな任務だ。貴官の大隊に所属するメンバーを、自分で選抜してくれ。貴官に大隊の編成任務を命じる」
俺はそれに、思わず聞き返してしまう。
「編成任務……で、ありますか?」
「ああ。実は、貴官が大隊長に就任するという噂がすでに流れてしまっている。人類最強の部隊にぜひとも入りたいという転属希望者が殺到しているのだ。誰が選抜しても不満が出ることは確実なので、いっそのこと死神殺し本人に選んでもらうのが、一番角が立たないと判断した」
ということは、俺の好きなように所属メンバーを決めていいということだ。これはやりがいのある仕事と言えるだろう。
「了解しました。全力で看板通りの大隊を編成したいと思います」
こうして俺は、自分の部下の選抜作業を始めた。
ただ、希望者が多すぎたので、足切りラインとしてオルランドⅠ型の操縦経験を設定した。いくら腕に覚えがあっても、この機体を操縦したことがないものは書類選考の時点で落選とした。
次に俺の直属小隊のメンバーで面接を行い、連携がとれなさそうなものや、仲良くやれそうもない連中を除外した。
それでも結構な人数が残ったので、最後は俺の直属小隊と模擬戦を行い、これはと思える見どころのある人物を選出していった。
こうして、四個中隊、計四十八名の大隊編成作業を終え、慣例通りに費用俺持ちで親睦会を開いた。
ちなみに俺の大隊だが、ウォルターに副隊長を、セシィに副官をそれぞれお願いしている。どちらも役職付になるのを嫌がったが、俺も分不相応な役職を背負っているのだから、お前たちもいくらかは分担して欲しいとお願いしたら、しぶしぶながら受けてくれた。
第一中隊にはブライアンを、第二中隊にはエルトンを、それぞれ中隊長に指名している。
第三中隊には、新規入隊のアンソニー・スコールズを中隊長に指名した。彼は、俺の国では珍しい黒髪で、緑の瞳をした割と男前だ。ちなみに、今四十手前らしい。
性格は堅物という表現がぴったりの真面目ぶりで、身持ちが固い。しかし、固すぎてずっと特定の恋人がいないのだとか。
アンソニーの愛機はナイトスタイルで、俺と同様にサポートに特化している。そのため、味方のサポートを極めて人類最強となった俺に心酔しているとは、本人の談だ。
彼はその真面目ぶりを発揮し、俺にナイトスタイルの戦い方についてちょくちょく質問してくるため、いろいろと議論することも多い。俺にも得るものが多い、貴重な人材だ。
第四中隊には、同じく新規入隊のジェシー・ファリントンに中隊長をお願いしている。金髪をショートヘアにした、少し勇ましい感じの女性中隊長だ。
俺の軍では数の少ない女性多脚戦車乗りだが腕は確かで、特に周囲の状況判断に優れる点を高く評価し、中隊長に任じた。
見た目は少し線が細い感じだが、騎乗する愛機は両手持ちの大剣を装備したデストロイヤースタイルだ。
ここぞというタイミングで繰り出される必殺の一撃は、どこかウォルターの戦い方に通じるものがある。
外見的には文句なしの美女であるため、早速ブライアンが粉をかけたが、一瞬で轟沈したそうだ。ウォルターも興味を示したが、どうにも脈がなさそうだと言っていた。
「軽薄な男は嫌いです。仕事ができる真面目な男性がタイプですね」
親睦会でエルトンが何気なく聞いた好みのタイプを答えるジェシー。ただ、その話の流れで俺のことについて語り始めたときは、かなり焦った。
「大隊長は、女性関係が少しだらしないところが減点ですが、そこにだけ目をつぶれば、なかなかいい男だと思いますよ?」
その瞬間、セシィの目つきが鋭くなり、同時に俺の寿命が縮んだ。
俺は別段ハーレムに憧れがあるわけではない。だから、これ以上のストレスを受けると胃に穴が開いてしまうので、不用意な発言は勘弁してほしい。
ただ、ウォルターに言わせれば、
「歩く不謹慎の対象が二人から三人に増えたところで、大した違いはないだろう?」
と、なるらしい。
本気でシャレにならないから、そういう発言は控えるように何度も強く懇願した。そうしないと、そろそろセシィの視線がヤバイ。ヤバすぎる。
俺はまだ死にたくないぞ……。