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SOLID STATE ANGEL ver.1.1

第47話 報酬

 俺が天使の首を狙ってとどめを刺したのには理由がある。姿形すがたかたちが人に似ている以上、内部的な構造も人体をしているのではないかと予想したからだ。

 つまり、頭脳に当たる演算器が頭部にあり、心臓にあたる魔石が体の中心部分にあるのではないかと考えた。

 であれば、首を切り離してしまえば、動力を失った頭部を自爆させることができなくなり、人工知能の貴重なサンプルデータを回収できるのではないかと予想を立てた。

 ただ、これらはあくまでも予想に過ぎないため、やらないよりはマシだろうという考えだったが、どうやら俺たちは賭けに勝ったらしい。しかし、これは軍上層部にとって予想外の大戦果だったらしく、俺たちへの報償ほうしょうにも影響を与えることになった。

「ジェフリー・オルグレン中隊長、到着しました」

「入れ」

 俺は呼び出しを受けたアーロン連隊長の幕舎ばくしゃを訪れていた。愛妻家の連隊長は前置きを述べることもなく、淡々と今回の呼び出しの理由の説明を始めた。

「ジェフリー中隊長。今回の天使の撃破の件、ご苦労だった。ただ、諸君らの戦果が大きすぎて、少々問題が発生している」

 そう述べて、少し苦々しい顔になりながら、その問題の内容の説明を続ける連隊長。

「天使の頭部を回収できたことは、上層部としてもうれしい誤算だったのだが、いかんせん、ことが重大すぎるのだ。この情報を新帝国に知られるわけにはいかなくなったので、天使を撃破したものの情報も含めて、隠蔽いんぺいする必要性が生じてしまっている」

 そう言って、申し訳なさそうな顔をしながら、今回の論功ろんこう行賞こうしょうの話につなげる。

「そこで、だ。本来なら諸君らを昇進させてやりたいのだが、大っぴらに公表できなくなった以上、それができなくなってしまった。だから、せめてものつぐないとしてボーナスをかなりはずんでおいた。一週間の特別休暇も併せて支給するので、それでお前の部下たちをねぎらってやってくれないか?」

 俺はその理由に納得したので、特に拒否することもなくその報償ほうしょうを受け取る。

「はっ。過分な配慮に感謝いたします」

 俺のその返答に、少し意外な顔をしながら連隊長が確認をとる。

「本当にいいのか? こう言ってはなんだが、お前たちの働きにほとんどむくいてやれないのだが……」

 俺はそれに、正直な気持ちを伝える。

「天使の首を狙った最後の攻撃は、小官にとっても賭けでした。博打ばくちに出るのは小官自身の判断でもありますので、予想外に大勝ちしすぎたとしても小官の責任の範囲内だと思っております」

 連隊長は俺のその返答に納得した様子で一つうなずき、続きを語る。

「そうか。では、貴官のボーナスはもう少し上乗せしておくので、それで祝勝会でも開いて、彼らをねぎらってやってくれるか?」

「はっ」

 心の中で祝勝会を費用俺持ちで開く予定を立て、幹事も自分ですることを決定してから、俺は連隊長の前を辞した。