SOLID STATE ANGEL ver.1.1
第40話 天使の横顔
私に名前はありません。強いて言えば、お父様からのコールサインである天使型01でしょうか。
私は今日も旧人類たちに絶望を与えるため、前線へと向かいます。
背中に収納されていた翼を広げ、足の裏から風魔法によるジェットを噴出させ、空を飛びながら向かいます。
この飛び方は非常に不安定であるため、もし同じ装備を旧人類が身に着けたとしても、まっすぐにすら飛ばせないそうです。
ですから、優れた計算能力を誇る新人類の私たちのみに許された飛行方法だと、私たちの創造神であるお父様は言っていました。
「ひぃっ! 天使だ! 天使がこっちに来たぞ!!」
やがて見えてきた旧人類たちの多脚戦車から、そのような声が上がります。そして、蜘蛛の子を散らすように、一目散に私から遠ざかろうとします。
「ここまでは、お父様の計算の通りなのですが……」
私は、つい余計な独り言をつぶやいてしまいます。
そのまま、私に背を向けている多脚戦車を私の剣で薙ぎ払っていきます。
とても簡単な作業ですね。
ちなみに、私のお披露目の時に持っていた剣は撮影用だそうで、今の私は、身の丈を超えそうなほど巨大な剣をふるっています。
そうやって、私たちの敵を楽々と狩っていますと、やがて私の前に立ち塞がるものが現れ始めました。
「俺はここだ! かかって来いよ、自称天使さんよ!!」
そう言って両手を広げ、自分の存在をアピールしています。
「本当に、私には理解できません……」
そんなことをしても、わずか数秒で死んでしまうのに。
一部の旧人類たちは、そのわずかな時間を稼ぐのが目的だと言わんばかりの態度で、私に対して無謀な攻撃を仕掛けてきます。
私たち新人類はバックアップが可能であるため、死ぬことはありません。
しかし、旧人類は一度死んだらそれまでです。
それなのに、復活の利かない命をなぜそのように簡単に投げ出せるのか、どうしても理解できません。
さらに理解できないのが、彼らの感情です。
そうやって向かってきた敵の操縦席を撃破後に何度か覗いてみたのですが、まるでやり切った満足感とでも言うのでしょうか? とてもいい笑顔でこと切れているのです。
私が理解不能な現象に少し思いをはせていますと、次々に私に対して無謀極まりない攻撃を繰り出してくるものが現れ続けます。
一機あたりにかかる時間はごくわずかですが、それでも、こう数が多いと結構な時間のロスになります。
「神であるお父様の計算には、このような行動はありませんでした。本当になぜなのでしょうか?」
お父様の計算によると、旧人類たちは私とのスペックの差に恐れおののき、皆一様に逃げ惑うので、簡単に蹴散らせるはずでした。
しかし、現実は違うのです。
まるで、誰かを逃がすための時間を稼ぎたいとでも言うように、果敢に向かってくるものが後を絶ちません。
「もしかして、旧人類たちは、お父様の計算以上に強いのではないでしょうか?」
造物主であるお父様の言葉を疑うなど、私たち新人類には許されざる大罪と言えるでしょう。
しかし、直接旧人類たちと対峙し続けていると、どうしてもこの疑問が拭い去れなくなっていくのです。
「もしかして、私は壊れてしまっているのでしょうか?」
私は自身の状態に少し疑問を抱きながら、今日も旧人類たちに引導を渡し続けます。