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SOLID STATE ANGEL

第18話 戦場の死神

 休暇までのローテーションの間隔は随分と長くなってはいたが、きちんと休息をとるようにとの連邦の方針は健在だった。

 そんな休日のある日。朝食の場で、ウォルターが南部戦線の最新情報を雑談として語り始めた。

「なあ。戦場の死神の噂はもう聞いたか?」

「なんだよ。それ?」

 みんな思い当たる話を知らなかったようで、代表してセシィが聞き返した。

「なんでも、めっちゃ素早いブリキ野郎が南部戦線に出たそうだ。速すぎて誰も攻撃を当てられない。で、完全に無双状態だそうだ。それで付いたあだ名が戦場の死神なんだとよ」

 その話を聞いた俺は、現在の戦況などを考えると腑に落ちたので、その旨を伝える。

「なるほどな。そう来たか」

「なんだ? どういうことだ?」

 俺のその発言に、セシィが首をかしげている。そこで、俺はその説明を始めた。

「帝国では主に魔石不足により、ブリキ野郎のこれ以上の増産はできない。ここまではいいよな?」

 頷いているので、そのまま説明を続ける。

「で、だ。連邦の総攻撃によって再び押され始めた帝国は、この状況を打開したい。しかし、数は作れない。なら、どうするか?」

 俺がここまで言うと、ニールはピンと来たようだ。

「ああ。なるほどな。それで戦場の死神か」

 セシィとウォルターはまだ分かっていない様子なので、俺は答え合わせを始める。

「数は作れないが、戦力は増強したい。なら、一機当たりの性能を上げるしかない。というワケさ」

 みんな納得してくれたようなので、俺はさらなる情報をウォルターに求める。

「ちなみに、その戦場の死神は何体いるんだ?」

「確認されているのは、今のところ一機だけらしいぞ」

「ということは、たぶん高コストにしすぎて量産には向かないんだろうな」

 そんな俺の予想に対し、セシィが疑問点を述べる。

「じゃあさ。帝国はこれ以上強くならないってことか?」

「いや。そうでもないぞ。今の死神の戦闘データがそろってしまうと、程よくダウングレードした量産型が作られてしまうだろうな。だから、できれば早めに撃破してしまいたいところだな」

 俺がそう言うと、ニールが正確な現状認識を述べる。

「そんなことは、上も先刻承知だろ? 俺達は俺達の仕事をするだけだ。ひたすら敵を倒し続ける。それだけだ」

「ああ。そうだな。その通りだ」

 俺達はこの話題をここで終わりにし、続けて他愛もない雑談と朝食を楽しんだ。