SOLID STATE ANGEL
第14話 暗転
それから数か月が経過した、夏も盛りのころ。
大陸の北部に位置するこの地方ではそこまで気温が上がらず、むしろ過ごしやすいと言える季節になった。
しかし、増え続ける自立型の新兵器は、兵士全員の心胆を寒からしめるのには十分すぎた。北部戦線はまだマシな方で、帝国の本土が近い南部戦線では、だんだんと厳しさを増してきているらしい。
自立型はその数を増すごとに戦闘経験の蓄積も進んでいる模様で、その戦い方がだんだんと洗練されてきている。
じりじりと逆転され始めた戦況は、俺達に手堅い作戦をとらせるようになっていた。もはや、以前のボーナス目当てのような戦い方は許されなくなっているほど、押し戻されてしまっているのだ。
「チクショウ。ブリキ野郎ばっかり、次から次へと……」
思わずといった感じで、セシィが愚痴をこぼす。もはやそれに軽口を返す余裕はおろか、励ます気力さえもわいてこないほどに自立型の数と割合が増えている。今ではちゃんとした人の乗っていると思われる敵の方が少ないぐらいだ。
こちらは一つしかない命を懸けて戦っているというのに、相手は機械で、極論すれば金さえあればいくらでも作り直せるシロモノだ。
そんなやるせなさからか、いつのころからか、兵士達は自立型のことをブリキ野郎と呼び始めた。
俺もうんざりとしながら、こちらに向かってくるブリキ野郎に対峙する。
そうすると、相手は初手で飛び掛かって攻撃してきた。
俺は冷静に車体を左にずらし、それをかわす。すれ違いざまに車体を回転させるようにして左手の盾で強打。横転させてから剣でゆっくりととどめを刺す。
飛び上がっての攻撃は車体重量ごとぶつかることになるため、一見すると強いように見える。
しかし、空中では姿勢が制御不能になるため、俺がしたように冷静にかわされると一転してピンチになる。
そのためジャンプしての移動は、飛び退って素早く距離をとる以外の使い方はするなと、新兵の間に教官によって叩き込まれる教訓だ。
このようなセオリーを無視した攻撃に、まだまだブリキ野郎の戦闘経験が足りていないことが分かる。
今はまだ人類の技術の蓄積が勝っている。今はまだ。
しかし、ブリキ野郎の学習速度は加速度をつけ始めており、そう遠くない未来に逆転されてしまいかねない。
俺はブリキ野郎の炎上する操縦席を横目に見ながら、少しでも自分を奮い立たせるべく、口を開く。
「愚痴を言ってもどうにもならない。とにかく敵を削り続けよう。……俺達はそれしかできないんだからな」
少しずつ破滅へと向かっている実感を無理やり無視して、俺達は戦いを続ける。ほんの少し前までは、俺達の勝利へと続く明るい未来予想図が広がっていたのに、今ではもう、暗澹