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先祖返りの町作り(再調整版)

第169話 ヨウセツ

 電気自動車の開発を目指してから、およそ1年が経過した頃。

 今後の開発を行うにあたって、ある問題点が浮上していた。それは、部品を接合する技術の問題である。

 現在は鍛接と鋳掛と呼ばれる、伝統的な接合方法が使われている。

 私も魔道具師として金属加工を行っていたため、この点に特に疑問を感じていなかった。

 しかし、今後自動車産業を立ち上げるにあたり、これらの方法だけでは効率が悪過ぎると、やっと気付いたのだ。

 そこで、なんとか溶接技術を開発できないかと考え始めた。

 ただ、当たり前ではあるが、溶接するためには金属を溶かすほどの高温を、狭い範囲に発生させなくてはならない。

 現代ではアーク溶接と呼ばれる方法が主に利用されており、アーク放電と呼ばれる現象を利用している。

 しかし残念ながら、どんな原理を用いてこの現象を発生させているのかの仕組みを、私は知らない。

 しばらく考えたが、ガス溶接と呼ばれる方法を採用する事にした。これは読んで字のごとく、ガスを燃焼させて金属を溶かし、溶接する方法である。

 アーク溶接と比較した場合、火花が少ないために接合部分を確認しやすく、溶接不良が起きにくいという利点がある。

 しかしアーク溶接よりも広い範囲を熱してしまうため、局地的な溶接には適しておらず、溶接速度も遅いという欠点もある。

 しかし、現在の伝統的な手法よりははるかにマシだと判断し、なんとかこの方法で実現できないかと考えを巡らせる。

 現代のガス溶接では、比較的高温を作りやすい、アセチレンガスが多く使われている。

 しかし理屈の上では、この都市でも比較的容易に手に入る、水素ガスでも代用が効くはずだ。

 このための研究をダイガクに依頼していたが、とりあえずの代用品として、魔道具形式の溶接機を作る事にした。

 氷やお湯を作る魔法がある事から分かる通り、温度を変化させる命令セットが存在する。そのため、これを大幅に加熱させる方向に魔力を割り振れば、ガス溶接機のようなものが作れるはずだと考えたのだ。

 実際、これは比較的容易に作る事ができた。しかし、致命的な欠陥があった。

 魔力効率が悪過ぎたのである。最低でも、森アルク族の魔石が必要なほど、大量の魔力を必要としたのだ。

 しかし、このようなものを水素ガスで作って欲しいというサンプルにはできたため、私の自作の魔石を搭載して、無理やり作動させている。

 私の保有している金属加工の技術を応用して、自分でガス溶接の技術を開発し、ダイガクで実演して、目指すべきものの説明を行った。

「とりあえず、必要最低限の道具の開発は、以上ですかね?」

 私はそう独り言をつぶやき、さらなる研究開発に邁進するのであった。