先祖返りの町作り(再調整版)
第116話 ガイン自由都市軍
それから季節が一巡した頃。
組織の再編成を行っていたガイン警備隊は、新設された軍隊として生まれ変わっていた。正式な常備軍となったガイン警備隊は、名称を「ガイン自由都市軍」と改めた。
今日は、その設立の記念式典が開かれている。私は演説を頼まれたため、壇上の席に座って順番を待っていた。
やがて式典は進み、私は静かに演説を始める。
「皆さんは、この国で最初の、平民だけで組織された正式な軍隊になりました。この瞬間に立ち会えた事を、私は誇りに思います」
私はここで一呼吸置いて、その意味を語る。
「あなた達は、平民にやっと与えられた牙です。
誰からの、とは、あえて言いませんが、理不尽に対抗できる武器です。
そして同時に、理不尽から守るための盾でもあります」
そして私は少し声量を高め、演説を続ける。
「あなた達は、決して負ける事は許されません!
もし、あなた達が倒されたその時には、この都市が、そこに住む家族が、恋人が、友人が、理不尽にさらされる事になってしまうでしょう!」
さらに声量を高め、オーバーアクションぎみに身振り手振りを加え、演説を続ける。
「ですから! あなた達は!
この国で最強の!! 精鋭にならなくてはなりません!!
あらゆる理不尽を退け!! あらゆる理不尽から守る!!
最強の軍に!! ならねばならないのです!!」
私はここで呼吸を整え、最後に小さく付け加えて、演説を締めくくる。
「……いつか、きたるべき日のために」
そして、私は次の演説者に席を譲る。
その人は、ガイン自由都市軍の初代将軍で、カントという人物であった。
彼も静かに演説を開始した。
「諸君。私は多くは語らない。ただ、少しだけ想像して欲しい。
きたるべき日に、ガイン自由都市軍の一員として、活躍する自分の姿を」
カント将軍もまた、少し声量を高めて続きを語る。
「しかし、そのためには、我々は最強の軍にならなくてはならない。
おそらくその訓練は、想像を絶する厳しさだろう。だが、私は全く心配していない。諸君らの目を見れば分かる。
胸に熱いものがこみ上げて来ているのだろう? 私も同じだ」
そして彼は、その野太い声を張り上げて語りかける。
「その熱さを決して忘れるな!!
そして、今、私は諸君らに許可を出す! 拳を突き上げ、大声を出す許可を!!」
カント将軍は右拳を天高く突き上げ、絶叫しながら演説を締めくくった。
「きたるべき日のために!! オオオオォォォォォ!!」
彼の雄たけびに続けとばかりに、一兵卒にいたるまで全員が右拳を突き上げて、雄たけびを上げる。
「「「オオオオォォォォォ!!」」」
その大気を震わせる絶叫が、天に届けとばかりに何度も突き上げられる拳が、私の胸も熱くする。
「オオオオォォォォォ!!」
気付けば私も、雄たけびを上げていた。
さあ、雌伏の時の始まりだ。