先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~
第191話 イサミの横顔
私の名前はイサミ。イサミ・ウル・ガインです。
つい先日、ガイン自由都市の七代目領主として就任したばかりの若輩者です。
不思議な響きを持つ私の名前ですが、これは、一族の伝統に則り、大おじい様が名付けてくださったものです。
その時に話してくださった内容をお父様のリョウマから教えていただきました。
なんでも、ここからは遠い国で後の世に語り継がれるほどの最精鋭部隊があり、その隊長の名前をいただいたのだとか。
その最精鋭部隊、シンセングミの名前の響きもどこか私たち一族の名前と同じ雰囲気がしますので、大おじい様が言っておられるここからは遠い国というのは、天上の世界にある国で間違いないでしょう。
そして、私の父のリョウマという名前は、その世界に生息している魔物の王を馬として乗りこなすほどの立派な人物になりますように、という意味が込められていると聞きました。
ということはです。
天上の世界には魔物の王として君臨できるほどの強大な存在がいて、それすらも討滅できるのがシンセングミなのでしょう。
その世界には大おじい様と同じアルク族の先祖返りたちが、多数、暮らしているはずですので、その部隊が強いのも納得できます。
先祖返りは生まれつき強大な魔力を持っていて、魔法との親和性も極めて高い種族です。
そのような人たちで構成された部隊が、弱いはずがありませんから。
そんな彼らの中にあってさえ、なお、語り継がれるほど強かったというシンセングミがどれほどのものだったのか、私には想像することすらできません。
そこの隊長の名前をいただいたという、私のこの名前に込められた思いを考えますと、少し身震いしてしまいます。
私は生まれた時から次期領主として育てられましたので、剣術などの護身術も一通りは習得しています。
ですが、残念なことに、私は体を動かすことがあまり好きではありませんでした。
それよりも、大おじい様の幼少時代の話を聞かせてもらったり、様々な本を読んでもらったりするのが大好きな子供でした。
私たち、ガイン家の一族のものにとって、大おじい様は憧れの存在であり、目指すべき目標でもあります。
そのためか、私も大おじい様のような知的な大人になりたいと思っていて、読書にのめり込むようになりました。
大おじい様も読書家ですから、周囲から大おじい様そっくりだと言われるたびに、私は誇らしく思ったものです。
私たち、ガイン家の直系の子孫たちには、あることを見届けるようにと、代々、語り継がれています。
大おじい様は、この地に楽園を築こうとしている。
ただ、それには長い年月が必要になるので、私たちヒム族の寿命では全てを見届けるのは不可能です。
そのため、子孫たちに託されているのです。
これからも続くであろう、大おじい様の活躍をすぐ側で見続けて、必要であればその手助けも積極的に行う。
これこそが、私たちにとって、一番、大切な使命になっています。
大おじい様の目指している場所がどれほどのものになるのかは、全く想像もできませんが、現時点でもかなり理想郷に近づいていると感じています。
他の領地の平民の暮らしぶりと比較してみれば、この地は明らかに楽園で間違いないのですから。
平民の各家庭にも上下水道が完備されていて、街並みは清潔そのものですし、水道のジャグチをひねるだけで上質な飲み水が得られます。
それを使っての入浴も、この都市では特別な贅沢ではなくなっています。
そして、私の代でも、この地はさらに発展を遂げるでしょう。
大おじい様がこの領地にいてくださる限り、理想郷への道のりは、確実に進み続けるのですから。
その手助けができることが、私たちガイン家の一族に生まれたものにとって、一番の誇りになっています。
最近生まれた息子のヨシツネに後を継がせる時までには、できるだけ発展させてみたいと、今はそのように考えています。