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先祖返りの町作り ~無限の寿命と新文明~

第14話 魔力制御訓練

 マルスとロロナの二人だけとはいえ、予定していた算数の全てを教える事に成功したころには、二年ほどが経過していた。

 気が付けば私も十五歳。成人まで半分となった。

 最近は魔力制御の訓練を中心に頑張がんばっている。これが上達すると魔法の射程が伸びて、正確に着弾するようになるからだ。目標は祭司長だ。

 たまに見せてもらった祭司長の狩りはすごかった。何と言っても弓が必要ない。弓を使う意味がないとも言える。祭司長の魔法は、弓よりも射程が長くて命中率が段違いにいいからだ。

 水を鋭くして飛ばす水槍すいそうの魔法等であれば、移動している獲物えものであってもホーミングしながら着弾する。

 そんな祭司長の魔法にすっかり魅了みりょうされてしまった私は、弓の腕がなまってしまわない程度には使いながら、魔力制御の訓練をひたすら続けるようになった。

 だが、このころになると、基礎の循環訓練では上達じょうたつが感じられなくなってしまっていた。そこで、素直すなおに祭司長に相談してみたところ、上級編を教えてくれた。

 水魔法の水球や土魔法で作った土のかたまりで、できるだけ正確な球や立方体の形を作り維持する。そして、それらをできるだけ素早すばやく動かす。

 そのまま三年が経過したころになると、私の魔法の射程は弓よりも少し長い程度になり、ホーミングの精度も上がって、かなりの命中率をほこるようになっていた。

 私の狩りには、大人が同伴どうはんしなくてもいい事になった。

 それから三年も過ぎ去ったころになると、弓の二倍程度の射程になっており、ほぼ百発百中になっていた。

 私はいつの間にか、里一番の魔法の使い手になっていた。

 そんな私を見ると、祭司長はどこかほこらしげで、うれしそうに感想をこう述べていた。

「いずれは追い抜かれる事になると思うておったが、まさか、成人前に抜かれてしまうとはのう」

 これはずっと後になって分かった事なのだが、若い者に追い抜かれてしまっても、ちっともくやしくないどころか、むしろうれしくてたまらない相手がいる。

 それは自分の子供たちだ。

 なので、祭司長は私のことを息子と思ってくれていて、とても愛してくれていた事が分かる。だが、この事に気づくのは、かなり先の話になる。

 ちなみに、すっかり仲良くなっていた行商人のアレンさんは三十代になっていて、既に結婚していて、今や二児のパパだそうだ。

 そんなアレンさんは、口癖くちぐせのようにしてこう語っていた。

「下の娘がかわいすぎて、大人になっても手放せそうにない」

 親バカぶりをいかんなく発揮するようになっていたが、それもどこか微笑ほほえましくて、私はいつも相槌あいづちを打ち続けていた。

 この時、私は少し天狗てんぐになっていた。今になって思い返してみれば、かなり無謀むぼうな挑戦をするようになっていた。

 土魔法が使えて魔力制御に自信があるのなら、とあるラノベの主人公を知っていれば、ピンと思いつくものを作ろうとしていた。

 祭司長をモデルにした、フィギュア作りである。

 実際にやってみると、小さなサイズで複雑な造形を作ろうとすると、恐ろしいほどに難しい。しかし、天狗てんぐになっていた私にとっては、むしろ都合がいいと考えるようになってしまっていた。

「これはいい訓練になりますね」

 そんな独り言をつぶやき、しばらく無駄むだな努力を続けた。

「これはどうやっても無理です!」

 納得なっとくできたころには三年が経過していて、それから改めて魔法の射程等を確認してみたら、それほど腕が上がっていない事実に、私は愕然がくぜんとしてしまった。

 ようやく伸びた鼻がへし折られた私は深く反省し、単純な造形のものをできるだけ素早すばやく動かす、祭司さいし長直伝ちょうじきでんの訓練にあわてて切り替えた。

 気が付けば私も二十四歳。里を出るまで、後六年しかない。